効果と効率を最大化する、海外進出コミュニティーの秘訣⑩ ~愛知県食品輸出研究会~


愛知県の食を世界にアピールする際、使われているブランド「サムライキュイジーヌ」。食文化の壁を乗り越えるために現地のシェフとコラボしたメニュー開発に力を入れている愛知県食品輸出研究会ですが、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか?

ニューヨークでの商談会のために、シェフに来日してもらう

ニューヨークで行われている愛知県食品輸出研究会のイベントは、シェフによるデモと商談会という企画で行われています。しかし前回の記事でお伝えしたように、単に食材を渡してメニューを考えてもらうだけでは、愛知の食の精神や神髄までも理解してもらうことは難しかったのです。そこでシェフに愛知の食を現場で見てもらうことにしました。シェフは来日後、愛知全域を二日かけて縦断。日中は工場など生産現場を見学し、夜は酒かすの魚をつまみながら議論。うなぎだけでも三種類を食べてもらい、ひつまぶしはどうして生まれたかを紹介したところ、シェフ自身も非常に面白がってくれたといいます。動画では伝わらない愛知の魅力をニューヨークのシェフに体感してもらうことで、より愛知県らしいメニューが誕生しました。

八丁味噌蔵を訪問した時の様子はテレビ局にも取材された

海外開発メニューは、大きな気づきと刺激になる

日本での固定概念を超えたメニュー開発のメリットは、現地マーケットへの食材浸透だけにとどまりません。これまで数十年同じ食材を扱い続けてきたメーカーも気づかなかった、目から鱗の発見ができると愛知県食品輸出研究会の会長・平松さんはいいます。例えば平松さんが扱う佃煮の場合、これまで動物性のうまみ、例えばゼラチンや肉系のエキスを佃煮と一緒に使わないと決めていたそうです。海のものと陸のものをあわせることで、食材同士が喧嘩してしまうことを恐れていたからです。しかしニューヨークのシェフから「サーフ&ターフ(海と牧草地という意味)」という食べ方がアメリカでは馴染みがあるから、佃煮も陸のものと合わせられるのではと提案を受けました。そして出来たメニューが、佃煮に牛肉のタルタルとジュレを合わせた一皿。「非常にバランスが良く、探していたのはこれだったんだと新発見でした」。 この他、愛知県食品輸出研究会に所属する圧し麦メーカーは、加入当初は業務用の商品しか作っていなかったそうです。しかし国内での米消費量の減少とともに、売り上げが思わしくない状態にあったといいます。そこで海外進出を決め、これまでになかった海外用の個食パッケージを制作。香港を中心にPRしたところ、クルトンのようにスープに浮かせる新しい食べ方を提案してもらったそう。さらに大麦のギャバが健康に良いと次第に注目を集め、健康食品として広がり始めました。今では頻繁に香港に行ったり、健康系の展示会に出展したりと生産が間に合わないほどになっています。国内かつ業務用という枠から出て、海外の個人マーケットを狙ったからこそ得た成功です。 このように、日本にいてはなかなか気づかない食材の新たな可能性が、海外には散らばっているのです。

佃煮と牛肉のタルタルでSURF&TURF

海外での新発見が、国内での新商品に

海外で食材やメニューをブラッシュアップし、それを日本に持ち帰ったとき、新たなマーケットが形成できる。これも海外進出の醍醐味とメリットのひとつだと平松さんは強調します。多くのメーカーにとって、海外売り上げが国内売り上げを凌ぐようになるのは時間がかかります。国内市場も成長させ続けなければいけない中、少子化やマーケットの固定化という壁に風穴を開けるものこそが、海外進出で得たヒントなのです。「寿司がアメリカに行ったらカリフォルニアロールになって帰ってきた、というのが良い例。サラダ巻きとして日本でも受け入れられ、今やスタンダードになっていますよね。だからアメリカならではの佃煮の食べ方を研究して、それを日本に持ち帰り、新しいマーケットを開拓したい」と平松さんは意気込みます。一昔前のアメリカでは誰も食べなかった寿司が、今では街中に溢れかえっているなど、比較的短いスパンで変化や結果が見えるのが、食文化の楽しいところ。食文化の浸透はスピード感があるので、自分達の取り組みが形になって見えるのがやりがいにつながるのだそうです。

チョコレートと八丁味噌で作ったデザート

海外進出を行うにあたり、平松さんが変えたのは佃煮の使い方やメニューだけではありませんでした。次回はシェフコラボだけではない、親しみがない商品でも海外で抵抗なく受け入れてもらうための秘策をご紹介いたします。