効果と効率を最大化する、海外進出コミュニティーの秘訣⑪ ~愛知県食品輸出研究会~


自社商品を世界に出すにあたり、その食材が現地で親しみがないものであれば売上拡大が簡単でないことはこれまでご紹介してきた通りです。愛知県食品輸出研究会は現地のシェフとコラボすることで食材をその国の食文化に適合させたり、名古屋めしをサムライキュイジーヌと言い換えることで魅力の浸透を図りました。一方、会長を務める平松さんは、自社が扱う佃煮に関してもう一工夫加えることで、さらに食文化の壁を低くしているのです。その秘策とは一体何なのでしょうか?

佃煮、TSUKUDANIでは分かってもらえない

寿司をはじめとして、醤油や味噌などすでにアメリカに浸透している日本食材は数多くあります。しかし、まだまだ親しみを持たれていないものが多いのも事実。佃煮もそのひとつで、現状アメリカにおいては日本食材店以外で見かけることはほとんどありません。ツクダニ、と聞いても見た目も味もまったく想像がつかないというアメリカ人が大半なのです。これに対し平松さんは、味や特徴を知ってもらうために、なんと佃煮という食材名称自体を変えることにしました。味や商品の特長を知ってもらうために、アメリカ人でも馴染みがあり、想像できる食材名にすることが成功のカギだと気づいたのです。

いぶかし気にのぞき込む来場者

佃煮がテリヤキフィッシュとしてアメリカデビュー

テリヤキという名称や味は、実はアメリカでかなり浸透しています。テリヤキソースは多くの小規模スーパーでも取り扱いがあるうえ、子供の給食にまでテリヤキ味のメニューが登場するほど。平松さんはここに目を付けました。というのも、展示会に出た際アメリカ人のお客さんに「これは何?」と聞かれ、日本の伝統食材だと説明したものの、甘辛いという味が伝えられなかったのです。そこでテリヤキのような味だと言ったところ、それならと口に運んでくれました。「これまでは試食に出すと、甘い、と言われていた。スイーツなら甘くて当然だけど、甘いと思っていないものが甘いと許容されないんです。でもテリヤキの甘さはもう浸透しているから、テリヤキのような味だと言えば甘くても受け入れられる」と平松さん。伝統食材の名称を変えることに当初は葛藤がありましたが、現地の生の声に後押しされた大きな決断でした。

2014年にテリヤキフィッシュがデビュー

味のハードルを飛び越え、おいしいにつなげるために

「食べ物は命に関わります。だから初めてのものを食べるとき、誰もが慎重になるんです。どの人種であろうと、得体のしれないものを食べるときはまず見て、想像し、匂いをかぎ、また想像し、そこから恐る恐る口に運びます。でも先に味のイメージを言葉で伝えておくと、このようなハードルをいくつも飛び越えることができるんです」。さらに平松さんは、頭の中で想像した味と実際に食べた味が同じであることが、おいしいと感じる近道になるのだといいます。食べる前のイメージと現物の味が違うと違和感が先に来てしまい、おいしさから遠のいてしまうためです。だから食材の味を、現地の人でもわかる言葉で表現したい。そうしてできたのが「テリヤキフィッシュ」でした。このキーワードを見つけるのに5,6年かかったそうですが、この新たな名称は、食文化という壁を突破するのにとても重要な役割を担っているのです。

フレンチ風にしんの佃煮

あらゆる知恵と方法を使い食文化の壁を乗り越えた先に、新しい世界が広がっている。そしてそれを日本に持ち帰れば、既存のマーケットを突破することができる。平松さんは海外進出の経験から、これを実感しています。そんな彼が、今後目指したい夢や目標をお伺いしました。次回の記事をお楽しみに。

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