日本の寿司文化に欠かせないわさび。寿司の味を引き立たせてくれるだけでなく、抗菌作用も期待できるとあって、寿司屋に行くとほとんどの日本人がさび入りを注文しているようです。一方、ここニューヨークで寿司はすっかり定着し、寿司専門店だけでなく、有名オーガニックスーパーから街角の小さなスーパーまで、あちこちで寿司を見かけます。それでは、日本人にとってなじみ深いわさびも、寿司と同様に普及しているのでしょうか?そこには日本人が知らない意外な実態がありました。
まずはわさびの基礎知識から
わさびにはいくつかの種類があります。まず渓流や湧き水を利用して人工的に作ったわさび田で栽培される「沢わさび」。根をすりおろして食べるのが特徴です。一部の高級な寿司店や蕎麦店では、お客さん自らすって風味を楽しむこともあります。さらに、涼しく湿気の多い畑地で栽培し、葉や茎を食べる「畑わさび」。スーパー等で売られている主なチューブわさびの原材料となっているため、一番親しみがあるかもしれませんが、実は沢ワサビと畑わさびは同じ品種なのです。本わさびとして認められているのはこの「沢わさび」と「畑わさび」で、原料にこれらを50%以上使用している場合には、他の種類のわさびが入っていても本わさびとして商品表記が可能です。
アメリカ人が主に食べているのは「本わさび」ではない!?
もちろん日本食材店では日本企業が輸出するチューブの本わさびは売られていますし、日本人オーナーの寿司店では本わさびを使用している所が多いです。しかしアメリカ人が一般的に食べている寿司に添えられているわさびは、ホースラディッシュ(日本では主に西洋わさびと呼ばれます)原料のものが大半です。ホースラディッシュはヨーロッパ北部で栽培され、日本では北海道が主な産地。ローストビーフの付け合わせや魚料理に使用されるのが一般的なので、私たちが普段認識している「わさび」とは色も味も違います。色も元々は白っぽいものが多いですが、これに緑で着色することにより、本わさびの見た目に近づけているのです。そしてアメリカ人の多くは、このホースラディッシュわさびを「わさび」として認識しています。
練りわさびの他、粉わさびやわさびスナックも
「Wasabi Horseradish」などという商品名で売られているこのタイプのわさび、中にはマスタード入りなど独自の進化を遂げているものも。また、ホースラディッシュ原料の商品の中には粉わさびもあり、水を入れて練ると通常のわさびになるというタイプです。比較的コストが安いことなどから、粉わさびを使用する飲食店がニューヨークでは多いよう。この他、一部の日本メーカーはわさびソースという名前でサラダやチキンにかけるドレッシングとしてわさび関連商品を展開している場合もあります。アメリカ企業でもわさび関連スナックを展開しているブランドは複数あり、グリーン豆のわさび風味のようなものから、わさび醤油味のアーモンド、わさびピーナッツ、わさびクラッカーなど多岐にわたっています。
このように、日本人の考えるわさびとは原料や味が異なるものの、すでに市民権を得ている「アメリカのわさび」。次回の記事では、アメリカ人のわさびに対するリアクションや好みをご紹介します。