ラーメン店「Japanese Soba Noodles 蔦」 ニューヨークへ進出!

Japanese Soba Noodles 蔦

今回は、NYへの出店間近のラーメンの名店「Japanese Soba Noodles 蔦(つた)」と、アメリカ人のラーメン嗜好についてカジュアルにお話します。
同名のポッドキャスト番組もオンエア中です。今回ブログで綴る内容を、より詳しく解説しています。ぜひ聞いてみてください。また、ラーメンの関連記事もぜひご覧ください「一杯2000円!? ニューヨークで食べる日本のラーメンが高い4つの理由」「山頭火を展開する日本企業、米国にて農場買収!

「Japanese Soba Noodles 蔦」は、2012年に東京で創業、16年にラーメン店として初めてミシュラン星を獲得して以来、4年連続で一つ星を獲得した名店として知られています。海外展開も勢力的に行い、シンガポール、フィリピン、香港、台湾に出店。アメリカは、19年10月にサンフランシスコに1店舗目を開店、続いて2021年6月末にはニューヨークのダンボ地区(ブルックリン側のイースト川に面したブルックリン橋とマンハッタン橋の間、および近隣の地域の呼称)にオープン予定でしたが、パンデミックの影響で現在は見合わせており、店内営業での客数制限が撤廃されない限りオープンはしないとのこと。ラーメンはテイクアウトには向かないということで、サンフランシスコ店も現在は休業中です。
メニューはサンフランシスコ店と似たものが出されるようで、醤油ラーメンと塩ラーメンがメイン。ベジタリアンメニューはアメリカなので必須となりそうです。ニューヨーク店は、外食・飲食専門メディアであるEater.comをはじめ、様々なメディアで取り上げられ注目度は高まっています。

豚骨好きなニューヨーカー 「蔦」の醤油は舌に合う?

ただし、サンフランシスコ店は全米最大のクチコミサイト・Yelp.comでの評価があまり芳しくなかったため、ニューヨーカーにはいかに受け入れられるかが気になるところ。ニューヨークには既に多くのラーメン店が存在しますが、主流は豚骨ラーメン。弊社の店舗でもラーメンを提供していますが、豚骨(ちなみに「Tonkatsu」と発音する方が多い)を注文されるお客さんが6割。比較的にニューヨーカーにとってはまだ馴染みの薄い醤油ラーメンを、豚骨同様に浸透させられるかが、JapaneseSobaNoodles蔦の勝負所かもしれません。

欧米人にとって「ラーメン」=「スープ」

都市部でラーメンブームが始まって以来、ラーメン好きのアメリカ人も増えてきました。しかし、彼らにとって、ラーメンとはあくまで「スープ」。我々日本人にとっては、スープ、麺、具材など全てのバランスが調和した芸術であり、強いてジャンル分けするなら「麺料理」であるため、少し意外ではあります。もちろん、人の判断基準は「現存する自分自身の文化」の中で近いものを想像するのは当然ですので、欧米の方にとってはスープがメインであると思いたくなる気持ちも分かります。
分かりやすい例としては、弊社のカフェでラーメンの注文を受ける際に「麺はなんのチョイスがあるのか」と、約3割のお客さんに質問されるというもの。「そば、うどん、春雨などの麺を扱っているよ」と回答すると、彼らの好みやアレルギーに合わせて麺を変更される方が多数。中には麺なしにしてくれという人さえいます。それが彼らの口に合うなら、日本食のアレンジとして尊重するべきなのだろうと思い、リクエストに応えていますが、結果としてレストラン側が想定しない完成品が出来上がるため、それを提供することへの違和感はなかなか拭えません。
また、アメリカ人は辛いものが大好き。弊社では辛味を加える調味料として七味を提供していますが、どんぶりの表面が全て隠れるくらい大量にかけるお客さんの姿をよく目にします。その他、ラー油やスリラチャなど置いておくと、これら全てを同時にかけたり、スパイシーマヨネーズ(アメリカで見られる寿司によくかかっているソース)をかけたりする人も…。多くのシェフが何カ月、何年もかけて開発した自慢のスープと麺の絶妙なバランスをいとも簡単に崩してしまうという、提供側からすると歯痒い状況は否めないでしょう。

飲食店での米国進出 味のバリエーションや従業員の教育が大切に

もちろん「俺の味」路線、シェフおまかせで成功されている店も多数ありますが、ここアメリカにおいて飲食店を出すならば、宗教の違い、好みの違いなど、世界中から集まってくる方々を対象にする以上、ある程度のメニューのバリエーションが必要です。
また、従業員の教育は大変な苦労を要するところです。日本のような接客は期待できませんし、特に日本食の場合、日本食の舌を持っている従業員がどれだけいるかが重要なポイントです。
例えば知人のシェフがあるレストランのレシピ開発を請け負った時の話。料理工程をマニュアル化したことで最初はどんなキッチンスタッフでも彼が求めるレベルの味が出せていました。しかし、どうしても日本食の知識のない非日本人が調理することが多いため、数カ月後に大変な事態に…。

食材は生ものなので当然ですが、コンディションは常に変わり続けます。例えば、何らかの理由で味噌の状態が100%ではない場合、日本食の基本知識やその味を判断する味覚を持たない非日本人はその小さな違いに気付くことが難しいため、結果として提供する料理に大きな影響が出てしまうという訳です。

このようにアメリカでのレストランの出店は、日本国内とは違うハードルが多く存在するのは事実ですが、自身の商品への信念を持って新市場へ挑戦する「JapaneseSobaNoodles蔦」に、日本の醤油ラーメンの神髄をニューヨーカーに伝授してもらえること、とても楽しみにしています。

facebook
Twitter