【コロナ禍の海外進出 徹底分析⑥】販路拡大にマスト! 米国のバイヤーにPRすべきポイント

コロナ禍でのNY進出

海外進出を目指す日本企業から寄せられた質問に、Q&A方式でお答えする本シリーズ。第6回目は、米国企業にアプローチする際に押さえるべきポイントについて解説します。日本ではあまり重要視されない事柄も、米国のバイヤーには注目されることが多くあります。コツを知り、新たな販路を開拓してみてはいかがでしょうか。

Q/米国市場で非日系のバイヤーに好まれるポイントは?
A/デザインなどの基本要素に加え、認証マークなど「6つのポイント」をチェック!

日本の企業が米国で非日系のバイヤーに自社製品を売り込む時、パッケージデザインやサイズを日本仕様から米国仕様に変更すべきということは皆さんもよくご存知だと思います。今回はこれらの基本的なポイントを踏まえた上で、さらに気を付けるべきポイントを、弊社の実体験をもとに6つ紹介します。全て揃えるのは難しいと思いますが、今後に向けて準備をしておくと良いでしょう。

【ポイント1】「認証マーク」「USP」を意識

小麦粉を使わない「グルテンフリー」、ユダヤ教の食の基準を満たした「コーシャー」などは、近年日本でも浸透しはじめましたが、多国籍の人々が暮らす米国では、認証マークが付いた商品が圧倒的に多いです。
近年特に注目されているのは「B Corporation(略してB Corp)」。環境・社会に配慮した事業展開や職場環境などが社会的に考慮された企業が取得できる認証マークです。現在、世界で3350社以上、日本ではダノンジャパン、シルクウェーブ産業、石井造園、日産通信、フリージア、泪橋ラボが認定を受けています(2020年6月時点)。

NYに進出するならこれらのマークが絶対に必要なの?という質問が聞こえてきそうですが、実際のところ、これらのマークが商品に付いているからといって必ずしも売り上げが伸びるわけではありません。ただ、大規模なチェーンストアでは、認証を全く持っていない商品が存在しないジャンルもあるので、可能ならば取得するよう、アンテナは常に張っておくべきでしょう。

また、認証マークを取得する予算や時間がない場合でも、言及することで市場へアピールすることが可能です。マーケティング用語で「USP(Unique selling propositions)」と言い、その商品の特徴を端的にまとめた言葉でPRする手法です。例えば、鶏などを放し飼いにして育てている「ケージフリー」、自然由来である「ナチュラル」、環境に優しい「エコフレンドリー」などがあります。

食品の認証マークと主なUSP
食品の認証マークと主なUSP

注意すべきは、レストランなどでは認証マーク以上に、「いかに調理の際に他の食材とマッチするか」「時間短縮に繋がるか」などのパフォーマンスが重視されるケースが多いことです。もちろん高級レストランなどでは認証も重要視されることは間違いありません。意識して取得する準備を整えておくと販路拡大に役立つでしょう。

【ポイント2】自社の優位性を伝える表を作成しよう

次に押さえておきたいのが「他社商品と比べ、自社商品のどのポイントに優位性があるかを、しっかりと説明できること」です。他社商品といっても、日本での競合商品ではなく、現在米国で販売されている商品と比較できていなくては意味がありません。そのためにも、自社の強みを見える化した資料の作成をお勧めします。

例えば御社が豆腐店だった場合、自社商品の値段や保存期間、バリエーション、原材料が、他社商品といかに違うかが一目でわかる資料です。こちらはあくまで一例ですが、事例を作ったのでご覧ください。

自社の強みを見える化した「競合商品との比較表」の一例

必ずしも保存期間やバリエーションがポイントになるわけではないので、自社商品を分析し独自の表を作って頂ければと思います。この作業の際に必要となるのが現地のパートナーや営業マンの存在です。注意すべきポイントは、同じ豆腐であっても米国には非常に多くの商品があるため、自社商品のターゲットに合った競合商品2、3点を選び比較することです。弊社のクライアントも、この資料作成(すなわち競合分析)を通して自社商品の改善すべき点に気付けたケースが多くあります。比較ポイントは多い方がもちろん良いのですが、多すぎると逆に伝わりにくくなるため明らかに差があるポイントに絞って取り上げると良いでしょう。

【ポイント3】商品の保管期間・保管状況を明確に把握

商談の際に多い質問が「商品の保管期間・保管状況」です。既存の資料に記入している企業が多いと思いますが、曖昧なケースが多いため、米国で営業する際には、はっきりとした数値で説明できるようにしましょう。特にバイヤーが気にするのは、船便などで何カ月もかけてアメリカに渡って来た商品を店頭で何日間販売できるかということ。商談成立の重要なポイントですので、しっかりと把握しておきましょう。

【ポイント4】原材料・原産国に注意

続いてのポイントは原材料やその原産国についてです。日本の食品は特に添加物が多いため事前にジェトロなどを通してしっかりとした情報を集め、説明ができるようにしておきましょう。

原産国に関しての弊社の実例は、A社のチューブ状「わさび」。NYCの大手スーパーと交渉を進めていた際に、契約の直前でわさびの原材料が中国産、その他の成分がヨーロッパ産と知り、取引を中止されたケースがありました。全ての業者が原産国を気にするわけではありませんし、特にわさびのような日本らしさが関係する食材の場合に多いケースだと思いますが、注意すべきポイントです。NYの小売店では、いかに「本物であるか」にこだわる卸が多いです。原材料が売りの商品の場合、その点をしっかりとアピールすると良いでしょう。

【ポイント5】販売先のプライベートレーベルにできるか?

近年EC サイト専用業者などで、自社のレーベル「プライベートレーベル」を貼って販売することは可能かという問い合わせが増えました。要するに、パッケージに購入側の自由度がどれだけあるかということです。

弊社のクライアントの事例では、「自社(米国側)で売る時に自社のパッケージ、レーベル、ロゴをつけて売りたいのだが可能か」。また、「可能なら仕入れ時のパッケージはごく普通のものにしてほしい」といったケースがありました。これに対して融通が利くと取引の幅が広がるため、視野に入れておくと良いでしょう。
また、通常は10g単位で売っているお茶を「50gの大型パッケージにできないか」など、商談中には様々なリクエストが発生します。柔軟な姿勢で対応できる体制を整えておくと可能性が広がるでしょう。

【ポイント6】受賞歴をアピールしよう

コンペなどでの受賞歴がある場合は必ずアピールしましょう。国際的な賞はもちろん強いのですが、日本国内の賞も知名度の高いものであればアピールする価値は十分にあります。

例えば、弊社では「玉露」で有名な福岡県八女市の「八女茶」のニューヨークプロモーションを担当しております。こちらは国際的な賞はお持ちではありませんが、国内での品評会での輝かしい受賞歴があり、そこをアピールするとバイヤーの表情がグッと変わるのが分かります。そのほか「ミシュラン二つ星の〇〇レストランで採用されている」「取引先は日本全国500店舗」といった具体例や、日本国内や海外でのシェア率、売上の数値などもアピール材料となるのでしっかりと資料にまとめて伝えるようにしましょう。

ーまとめー

米国で非日系バイヤーと話していると、日本のバイヤーとの考え方の違いが明確に分かります。海外進出するなら、参入する国のニーズを把握することが必須であり、そのためのリサーチは欠かせません。リサーチの方法は、自社のスタッフを派遣する、海外のパートナー企業に協力を依頼するなどが一般的でしょう。海外での需要を探ることは、国内売上アップに繋がる鍵が隠されていることも多いです。ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。

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【解説】池澤崇

RESOBOX代表取締役社長。2005年にニューヨーク移住、邦銀勤務・大学院進学を経て、11年に起業。現在同市内で日本文化スペースやレストランを運営。日本企業(主に中小企業)の米国進出の支援事業も行う。19年より経済産業省所管中小企業基盤整備機構の国際化支援アドバイザー就任。

池澤崇