NYの夏の風物詩「野外フードフェス」は海外進出の第一歩に最適

NYのフードフェス

ニューヨークの夏と言えば、野外フードフェスティバル。毎年のように大小さまざまな公園、施設の駐車場などを会場にし、街の至る場所で開催されています。ワクチン接種が進み街が賑わいを取り戻したNYでは、早くも各地でフェスが開かれ、連日多くの人が楽しんでいます。

今回は、定期的に行われるフードフェスティバルについて、いくつか有名なものをご紹介します。フェスは、観光で楽しむのもおすすめですが、米国への進出を考えている企業や事業主からも、現地の反応を体感できる良い機会として注目されています。ポッドキャストでは実際に弊社が出店した経験も踏まえ、詳しく紹介しているので、聞いてみてください。

また、本文の最後には、日本に居ながらリモートで出店可能な方法も紹介していますので、是非読んでみてくださいね。

①厳選された販売店舗がズラリ!「Smorgasburg
毎週土曜日11AM – 6PM(一部7PM)

スモーガスバーグ(Smorgasburg)とはニューヨークの数か所(Prospect Park、Williamsburg、World Trade Center、Jersey City)で、4〜11月に開催されているNYを代表する一大フードイベントです。

特徴は、クオリティーの高い料理がズラリと並ぶところ。理由は主催者のこだわりにあります。参加費を払えば誰でも出店可能な通常フードフェスと異なり、希望者は主催者による審査に合格する必要。結果的にレベルが高い販売店舗が集結します。NYの20-30代の世代が興味を持っている食の最新のトレンドを知るにはもってこいのイベントと言えるでしょう。

 ②100カ国以上のグルメが集結「Queens Night Market
毎週土曜日4PMー深夜 

さまざまな人種の人々が暮らし、世界で最も多様性な地域と言われているQueens地区にある「Flushing Meadow Park」で開催されるフードフェスです。

日本(弊社もカレーで出店した経験があります)はもちろん、プエルトリコ、ベネズエラなど、100を超える世界中の様々な食を提供する販売店舗が集結し、グローバルな雰囲気が特徴。
各販売店舗は一食6ドル以下で販売しないといけないという決まりがあるため、一食分の量は少なめ。結果、訪問客は一つの販売店舗でお腹を満たすのではなく平均5〜8の異なる販売店舗を楽しむことができます。またライブパフォーマンスもあり、多種多様な食と文化を一箇所で味わうことができる、まさにNYらしいイベントです。

③日本に特化した「JAPAN Fes
 毎月一回開催(日時はHPを参照)

「日本」がキーワード。寿司やラーメン、たい焼きなどの販売店舗20〜30が結集するストリートフェスで、毎月開催されています。パンデミックのため一時休止していましたが、遂に8月から再開。出店の募集が始まり、弊社も参加を検討中です。毎回数千人のニューヨーカーでストリートが溢れ返り、真っ直ぐ歩くことさえ困難なほどの人気ぶり。出店手続きなども日本語でできるため、NYでの出店を希望される食関係者の方々にとって主要な選択肢の一つとなります。

本格進出の前の腕試しに最適なフードフェス

上記のようなニューヨークの夏の風物詩ともいえるフードフェスは、食のみならず、ニューヨークらしさを存分に味わえる機会ですが、今後、飲食関連でニューヨークに挑戦したい日本の方々にとって、うってつけの好機であることはご存知でしょうか。

1日で2万人を越す来客を集める桜祭りを主催したり、上記で挙げたようなNYの様々なフェスに過去に100回以上出店してきた私の経験として、これらのフェスは、自社商品・サービスのブランド認知度を上げる目的として、多くの売り上げを期待できる収益源として素晴らしい場ですが、また同時に、米国への進出を検討している段階の企業にとってはテストマーケティングとして最適と感じています。

実際にマーケティングリサーチを行う様子
実際にマーケティングリサーチを行う様子は「金沢のがんもどき老舗 NY開催の来場者約1万人イベントで人気ランキング3位に!」の記事でご覧いただけます

実際に勝負したい商品をニューヨーカーに購入していただき、即購入につながる商品、興味を示されない商品、予想を反して人気の商品など、貴重な生の情報を彼らの反応から収集し、この期間内に試行錯誤していくことが可能です。
実際に、鹿児島発のラーメン店である麺屋二郎が、上記Japan Fesのラーメンコンテンテストに出て優勝したことをきっかけに、ニューヨークに出店しその後急拡大をした前例もあります。

フードフェス出店の二つの利点
①有料=真の評価が浮き彫りに

現地で無料サンプルを配布し試食を通し意見を集めるタイプのテストマーケティングよりも、実際に購入して頂くプロセスは、お客さんの本音を引き出すことができ、リアルな反応が見えやすいといえます。日本人以上に率直な意見を言うと思われがちな米国人であっても、無料提供の場合、遠慮をし本音はなかなか言わない方が多数。反面、自分の財布からお金を出し購入してくださる方は間違いなく商品・サービスが気に入っている証拠ですので、意見を聞くべき対象と絞り込めます。

また、通常、テストマーケティングにおいては、開催費用や商品コストだけでなく、参加者に支払う謝礼などの支出が伴いますが、自らフェスに出店し販売すると、売り上げが立った場合には経費の削減、時に収益となる場合も大いにあります。

②宣伝文句など、販売方法の勉強になる

現地消費者に好まれる味付け方法、突き刺さる商品名など、販売店舗出店の機会に購買者の反応や、時に直接彼らの意見を聞きながら改善を繰り返していくことで、現地向けの商品を確定させる前にどのような形がベストであるかを知ることができます。

一度商品化し現地販売をはじめてしまうと、消費者の反応を見る機会は激減するため、サイズや含有物、パッケージの変更などを計画しても、何が正しい答えなのか分かりません。しかしフェスでは、1日の出店後にその日に消費者から得たフィードバックを参考に細かな変更をし、次の日にすぐに新しい施策を試すことが可能。商品開発のスピードが格段にアップします。

上記で挙げた三つのフェス以外にも無数のイベントが全米各地で行われているので、ご自身の米国におけるターゲットを絞り込む際にも役に立つでしょう。
例えば代替肉を生産しているメーカーならば、マス向けのフェスというより、ビーガン食を好む方が集まるビーガンフェスティバルへ出店することで、特定のターゲットにおいて自社商品がどのような評価が得られるか的確に知ることができます。

フェスへの出店で必要なもの

①各種証明書
米国内でSales Tax(売上税)の証明書、食事を提供するライセンス(数種類あり)を保持していることが条件です

②保険(COI : Certificate of Liability Insurance)
フェスの期間中に、万が一食中毒などの不測の事態があった場合、カバーする保険となります。補償額の規定などはフェスによって異なります。
米国にて食関連の法人を持っている場合、保険は義務のため必ず加入しておりますが、このCOIはフェス用に別途準備する必要があります。具体的には、現在契約している保険会社に連絡し、当日参加するフードフェスティバルの主催者企業名や開催場所などを記載した野外フェス用の証明書を発行してもらい(通常数日で無料で手続き可)、運営側に提出をすればOK。保険会社、フェス側共に全てオンラインで手続き可能なケースが大半です。

③ 銀行口座
法人として米国内に銀行口座があることが求められます。

④参加費
参加費は概ね一日300〜700ドル前後です。

⑤備品
テント発電機など。備品はフェスサイドの提供ではないため準備が必要です。
(上記リンクの商品は一例であり、同じものを購入する必要はありません)
発電機は、現地で調理をする場合のみ必要。フェスによっては追加料金で電源を供給してくれるところもあり発電機の持ち込みが不要な場合もあるため、事前に主催者に確認する必要あります。その他、消化器、調理器具など、フェス側からリースができるものもあるので、こちらも要確認。また水場もないところも多いので、調理において水を使うならば確認しておくと良いでしょう。

事前に知っておきたい参加時のポイント

①その場での調理が人気
傾向として、パッケージ済みのものより、その場で調理するものの方が目を引くため人気です。自社製品は「B to Cのリテール向けパッケージ商品」であるという場合においても、「その商品がどのように使える、また食べることができるのか」を直接消費者に見せることができる場でもあるので、20-30ドルで購入できる鍋や電気コンロ(Electronic Cooktop) 1-2台を現地で購入し(アマゾンを使用すれば1-2日で配送してくれる)実演販売をすることをお勧めします。

②クラフト、グッズなど飲食関連以外も出店可能
フェスへの出店は、飲食関連だけではなく、工芸品や衣服、化粧品やキャンドルなどグッズなどでの販売店舗の出店も可能です。ただし、来客層が自社の商品が狙うターゲットと全く異なるフェスに出店してしまうと、ある程度売り上げが見込める食品と違いまず自社の販売店舗に寄ってくれる方がほとんどいなくなり、結果、販売がないだけでなく、お客さんからの意見を得ることができなくなってしまうため、事前に参加を検討しているフェスを視察することをお勧めします。

③電子決済の準備を
米国でのレストラン決済は99%がアップルペイやクレジットカード。一方、野外フェスではまだまだ現金での支払いが主流ではありますが、新型コロナウイルスの影響もあり、電子決済が一気に増加しており、対策は必須。一番簡単なのは、SquarePaypalといった銀行口座と紐付けるオンライン決済サービスにウェブで事前登録をし、各社が無償(有料のものもあり)提供するスマートフォンのイヤフォンジャックに接続するドングルを取得する方法です。

④人件費
各州、最低賃金は異なりますが、ニューヨークでの時給は$15から。何人雇うかはオペレーション次第です。ただし、特に非日本人を雇う場合は事前に少なくとも数時間のトレーニングは必須です。
また、(これは必須のポイントではないですが)店員の外見で商品の「本物度合い」を意識的に判断される傾向があり多少なりとも集客に影響するという噂があるように、やはり日本の食材を出す販売店舗ならばフロントマンは日本人(または中国・韓国系のアジア人であれば区別がつかない)を雇う方が良いかもしれません。

⑤パフォーマーにもチャンス
ミュージシャンやマジシャンなど、パフォーマーも随時募集しているフェスが多いので、コンタクトしてみると良いでしょう。私も、過去に居合道していた際、Samurai perfomanceということで、何度か参加した経験があります。フェス次第ですが、報酬は基本的には$300-$500程。また無報酬で、投げ銭というフェスもありますが、ご自身の腕試し、または宣伝になると判断された場合はチャレンジしてみても良いかもしれません。

代行サービスで日本に居ながらの出店が可能 

RESOBOXの出店代行サービス

最後に弊社の宣伝になりますが、、、今回の記事で述べたような様々な条件等を満たし、さらに社員を数日間海外出張させるのはハードルが高いという方でも、フェスへの出店は可能です。例えば、弊社RESOBOXで提供している「出店代行サービス」は、コロナの影響やコストの関係で、御社社員の渡航が困難な場合、リモートで詳細なやり取りを実施した上で、出店に関する全作業を請負います。

弊社ではこれまでに、たい焼きパフェ、焼肉丼、カレー、キャラ弁など、多種多様な日本食でフェスに出店。100回を超える販売店舗経験があります。また、フェスで商品を売るだけに止まらず、出店中のテストマーケティング(顧客へのアンケートやバイヤーとの商談)や、消費者の生の声をレポートにしてお渡ししたり、当日の動画(のちに企業のPRツールとして使用可能)を撮影したり、ストリーミングで中継することも可能です。

関心のある方は、パンデミックが終了しいつも以上に盛り上がるニューヨークの好機を逃さないよう、ご相談頂けたらと思います。

がんもどきの販売店舗
トップ画像のように長蛇の列ができたがんもどきの販売店舗

最後に、ジェトロの助成金の情報です。募集がちょうど始まったので記載します。海外進出の際に知的財産権に関し、何らかの対策が必要と分かっていても「進出国ごとに手続きをしないといけない」「まだ売上も当該国でそこまで立っていないのでどうするべきか」などと悩まれる方も多いと聞きます。ジェトロが中小企業等の支援事業として、戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成するというサービスを打ち出しました。6月21日~ 7月21日まで募集するとのことなので、興味のある方はご応募ください。海外進出における法的なトラブルを避けるという面でも、おすすめです。

申請方法など詳細は以下ジェトロのHP「外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)」にてご確認ください。

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