【日本文化探訪記】甲州ワイン(後編)「キスヴィンワイナリー」こだわりの製造工程に感動(山梨県)


RESOBOXスタッフが日本の企業の素晴らしい技術や文化を紹介する本シリーズ。本編では、国産ワインの代表的として広く知られる山梨県の「甲州ワイン」を紹介。現地のワイナリーを訪ねてきました。

新進気鋭「キスヴィンワイナリー」を見学 DIY醸造所に感激

山梨県には日本全国にあるワイナリーのおよそ3割に当たる81のワイナリーがあり、甲州市にはそのおよそ半数の38のワイナリーがあります。
今回、RESOBOXスタッフの衣川が、そのうちの1つ、2013年創業の新進気鋭のワイナリー「キスヴィンワイナリー」に伺いました。同ワイナリーは自社畑を持ち、ブドウの栽培から醸造まで全工程を一気通貫で行っています。また、世界を舞台に勝負したいとの想いから、甲州ぶどうを使用したワインの他に、ピノ・ノワールやシャルドネなどの国際品種を使用したワインも製造されています。

Kisvinロゴ

案内してくださったのは、醸造責任者の斎藤まゆさんです。まずは敷地の一角に造られた醸造所に案内していただきました。その様子に無骨な印象を受けました。それもそのはず、醸造所はスタッフの皆さんがDIYで作られたそうです。理由は「そこにお金を使ってしまうと必然的にワインの価格も上げざるを得ないから」。そのため、ボトリングやラベリングも手作業です。

ワインラベル

また、ワインの香りや味に大きく影響する醸造タンクや樽は特にこだわっていらっしゃるそうです。例えば、味わい深いブレンドを目指し、あえて樽の種類を統一せず、少しずつ差を持たせているそうです。それにしてもワインだけでなく醸造所まで作ってしまうなんて凄すぎます!

ワイン樽

「いちいち考える」だから生まれる最高の味わいと香り

続いて畑へ移動。ブドウ栽培についてお話を伺いました。その中で「いちいち考える」ことを大切にしているという言葉がとても印象的でした。
例えば「光」。どの角度からどの程度の光が当たると最適で、そのためにブドウはどの辺りにあるべきかを徹底的に考えるそうです。その結果、直射日光だけではなく、地面からの跳ね返りの光も利用することができる「棚仕立て」を採用し、地面には最も光を反射する、白色のシートを敷かれていました。
ブドウ栽培に関するありとあらゆる現象に疑問を持ち、論理的に、科学的に、徹底して考えていらっしゃることがよくわかりました。

春の訪れ告げる「ぶどうの涙」に感動

雨も降っていないのに剪定した切り口からは瞬く間にポタポタと樹液が滴り落ちていました。不思議に思っていると、斎藤さんがこれはぶどうの樹液流動「水あげ」が活発化しており、春が来た合図なのだと教えてくださいました。
本編の取材に伺ったのは3月の下旬。この頃になると、気温が上がり冬の間眠っていたぶどうの木が目を覚まし、枝の隅々まで栄養分を届けようと樹液の流動が始まります。冬眠から目覚め一気に息を吹き返すかのようで、まさにこの木が生きているのだと感動しました。ちなみに、この滴で化粧水や美容液も作られるそうです。舐めてみるとほんのり甘い味がしました。

ぶどうの涙
枝から溢れる「ぶどうの涙」

最後にワインのテイスティングを体験。今回いただいたのは「キスヴィン 甲州 スパークリング2018」です。飲み口はフレッシュでありながら、白桃や花梨、リンゴの香りが口いっぱいに広がり、後味にほどよい熟成感がありました!

Kisvin Koshu Sparkling

ことわざ「敵に塩を送る 」 由来の地

ぶどう畑からは、甲州市内を一望できる塩ノ山 (しおのやま)を眺めることができました。その際に斎藤さんが山にまつわるお話をしてくださいました。
諸説ありますが、塩ノ山は武田信玄が隣国から塩止めされた際に、甲州には〝塩〟も豊かに倉(蔵)していると吹聴するために名付けた山と、言われています。あの有名なことわざ「敵に塩を送る(たとえ敵でも、苦境の時は助ける=人間味は忘れずにという意味)」の由来になった山だったんですね。

海外輸出加速 プロジェクトも発足 

海外市場における知名度が徐々に高まる「甲州ワイン」ですが、外国産ワインとの熾烈な競争にさらされることは言うまでもありません。これに対して、山梨県内のワイナリー15社を中心にした、甲州ワイン海外輸出プロジェクト(Koshu of Japan)が2009年から発足しています。
また、インフォーマルな場でも異なるワイナリーの醸造家同士の交流が盛んだそうです。これらのことからワイナリーとしては競合ですが、甲州ワインを共に盛り上げていく戦友であると互いに捉え、この土地には「敵に塩を送る」がしっかりと根付いているのだと感じました。

2019年2月1日から、日本と欧州連合(EU)による経済連携協定(EPA)において、互いの国から輸入されるワインにかかる関税が撤廃されました。これにより、ヨーロッパの方々にとっても日本ワインが手に取りやすくなりました。世界を舞台に躍進を続ける「甲州ワイン」から今後も目が離せません!