海外を中心に人気高まる「競技かるた(小倉百人一首)」

競技かるた

日本の古典和歌集のひとつで、藤原定家により選ばれた「小倉百人一首」が、近年アメリカをはじめとした海外で、人気が出てきてると皆さんご存知でしょうか?

ここニューヨークでも「小倉百人一首」を中心とした「競技かるた」の練習を行ってる団体「NYかるた会」があります。弊社RESOBOXでもこの団体と連携をし、メンバーによる練習場所を週に一度提供したり、イベントの企画を一緒に行うなど、日本のかるた遊びの文化の普及を後押しするため、同団体の活動を全面的にサポートしております。そこで本日はその「NYかるた会」の創設者であるヘンリー・アベリーさんに米国における百人一首について、インタビューしました。

どのように日本文化が海外に広がっていくのか、そのリアルな現状を皆さんにお伝えできたらと思います。文章に収まりきらなかったヘンリーさんの熱い思いも含め、Podcastではより詳しく聞いてもらえます。

1番の魅力は「昔ながらの文化」と「スポーツ」を組み合わせ

ヘンリーさんまず私のプロフィールですが、生まれも育ちもニューヨークで今も暮らしています。日本には大学生の時に半年ほど早稲田大学・国際教養学部に留学し、さらに卒業後に英語教師として東京の大学で2年間働いていました。今は、日本食レストランでマネジャーをしながら、「pop-talk(ポップトーク)」という言語学習のプラットホームを立ち上げ、自分の会社として運営しています。そして、かるたも大好きで小倉百人一首の集まりも主催して活動しています。

池澤:小倉百人一首との出合いは?

ヘンリーさん2013年に、競技かるたに打ち込む高校生の青春を描いた人気漫画「ちはやふる」のアニメを知り、「これなに?!」と、とても興味が湧きました。

「2018年第一回世界大会」に出場したヘンリーさん(中央)
「2018年第一回世界大会」に出場したヘンリーさん(中央)

一番惹かれたポイントは、「昔から続く文化」と「スポーツ」を組み合わせたゲームというところです。

実は、留学先に早稲田大学を選んだ理由は「かるた部」があったから。教師として2年働いたのち、2018年9月にNYに戻り、その翌年に「NYかるた会」を立ち上げました。

メンバーの多くは「ちはやふる」のファン

池澤:パンデミック前までは一週間に一度、皆さんで集まって競技されていた「NYかるた会」。メンバーはどのような方がいらっしゃるのですか?

ヘンリーさん様々な人種のメンバー10人程度が集まり練習していました。年齢層は、主に学生さんや若者。「ちはやふる」の影響力が本当にすごくて、アニメがきっかけのメンバーが多いです。実は、日本でも同じ現象が起きていて、現在競技する若者の多くは「ちはやふる」がきっかけでしたね。

池澤:百人一首のクラスなので、日本語をある程度読んだり、話せたりしないと参加できないのですか?

ヘンリーさんそう思われがちですが、平仮名さえ読めれば十分です。

また、平仮名が読めなくても、札に記された文字をアートのように覚えてもらい、和歌を読む音と繋ぎ合わせてもらえればゲームを楽しめます。

池澤:私も何度か拝見させていただきましたが、初めて来られた日本語が全く分からない方でも、ヘンリーさんがちょっとアドバイスをした1時間後には何枚か札を取られていて、「すごいな」と関心しつつも不思議ではあったんです。

ヘンリーさん:私の考えとしては、日本人であっても外国人であっても、特殊な札を覚えるということは同じです。もちろん、日本人の方が馴染みがある分覚えやすいですが、本人に覚えたいという気持ちがあれば誰でも札は取れますよ。

「2019年第4回米国かるた大会」に出場した徳の様子
「2019年第4回米国かるた大会」に出場した徳の様子

コロナ禍でオンラインにシフト 欧米を中心に世界から参加者

池澤:パンデミックになってオンラインで集まっているという話を聞きました。

ヘンリーさん現在、アメリカにある「かるた会」は、私の知っている範囲だとニューヨーク、ワシントンD.C.、ボストンの3カ所にあります。パンデミックに入ってからは、これらの3団体で「オンラインかるたグループ」を立ち上げました。そこにはカナダ、ブラジル、タイなど、いろいろな国からの選手も集まり、Zoomを通して練習会を開いています。

池澤:スマートフォンのアプリで「競技かるた ONLINE (iOS) / 競技かるた ONLINE (Android)」を見つけたのですが、こちらも使われていると聞きました。

ヘンリーさんはい。しかしアプリだと競技はできるのですが、人の顔が見えないのですよね。Zoomを使っている理由は、「かるた〝会〟」なのでたとえ画面を通してでも人と知り合って楽しむためです。きっかけはパンデミックではありますが、出会えなかった方とかるたを通して知り合いになれたのは嬉しいことですね。

池澤:オンラインの集まりには日本からの参加者もいますか?

ヘンリーさん時々います。ただ、時差のせいか、恥ずかしさからか少なく、欧米とタイからの参加者の方が多いですね。オンラインでの大会をこれまでに3回開催したのですが、その時は参加してくれて交流することができました。

池澤:「ちはやふる」をスタートとし、多くの方がかるたを知るようになりましたが、現在はどのような方法で普及活動をされていらっしゃいますか?

ヘンリーさん現在米国で表立って活動しているのは、先ほど述べた3つの団体合わせて30人程度です。

コロナ前はRESOBOXでのクラス以外にも、NYのアニメイベントや桜祭りなどでブースを設けて、かるたの模擬戦を行うなどPR活動を行なっていましたし、コロナ後はオンラインでも様々なイベントを開催してきました。今後はオンラインとオフラインの要素を併せ持った新しいイベントを考え、かるたの魅力をより多くの人に知ってもらうことに挑戦したいと考えています。

また、かるたの他にも、けん玉や折紙などの普及にも取り組んでいます。下記の記事もぜひご覧ください。

シリーズ【世界に広がる日本文化】けん玉編 ①米国人発信のYouTubeから世界でブレイク!
シリーズ【世界に広がる日本文化】折り紙編 ①米国では教育アイテムに進化

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ヘンリーさんがCEOを務める言語学習プラットフォーム「Poptalk」とは

番組後半で取り上げた「Poptalk」は、中級~上級の言語学習者(現在は主に英語)の更なる会話力向上を目的にした参加型オンラインプラットフォームです。ワインやスポーツなど様々なトピックに関するセッションを開催しており、自身の興味のある話題に参加しながら、教科書では学べない、生きた語学力を身につけることができます。興味のある方は、インスタで最新情報をチェックされたり、公式サイトでアカウント作成し、話したいトークの内容をリクエストしてみてください。

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