はかた伝統工芸館・木村誠館長編 「文化の合流地点」NYで伝統工芸品の進化に挑戦


海外で挑戦する方に経験談やアドバイスを語っていただく「海外挑戦者インタビュー」。13回目は福岡市の施設「はかた伝統工芸館」の木村誠館長(福岡県福岡市)にお話を伺いました。同館は博多織や博多人形など近隣の伝統工芸品を展示、紹介するほか、海外に発信する活動にも注力されています。

Q1・はかた伝統工芸館の歴史やコンセプトを教えてください
A・博多の伝統工芸 国内外に広げる

はかた伝統工芸館」(同市博多区)は、博多の伝統産業の良さを広げるとともに、地場産業の振興や地域活性化を目的に、2011年に開館した福岡市の施設です。旧冷泉公民館を改修した木造2階建ての館内に、福岡・博多に縁のある伝統工芸品を展示しています。素焼きだが陶器のような肌の博多人形や、経糸(たていと)を多く使い張りのある生地が特長の博多織をはじめ、博多曲物(まげもの)、博多ハサミ、博多こまなどが並びます。また、施設の枠を超え、海外との交流や販売促進にも力を入れています。2013年9月に福岡市の姉妹都市である韓国・釜山で初の海外展示会開催を実施。2019年には米ニューヨーク市でも開催しました。

NYのギャラリー「RESOBOX」での展示の様子

Q2・海外展開に注力される理由は?
A・国内需要の低下 活路求めて

日本国内では、これ以上の伸び代が期待できないと感じたからです。福岡には多くの伝統工芸が存在します。しかし、売り上げは1975年頃をピークに3分の1以下に減少し、右肩下がりの状態が続いています。また、技術を磨くことに注力されてきた伝統工芸の世界は、保守的なところも多く、海外と繋がることは未だこれからであるのも現状です。日本の伝統工芸の再興・発展のため、我々が切っ掛けを創出したいと考えています。

博多人形
博多人形

Q3・海外での目標と取り組みを教えてください
A・進化を遂げ、時代に合わせた新商品を創出したい

目標は博多の伝統工芸品を世界でブランド化することです。海外での評価が上がれば、自然に国内でも再評価されます。そのためにはこれまでのデザインや製法の踏襲にこだわらず、時代のニーズに合わせて変化していくことが大切です。例えば有田焼(佐賀県有田町)は日本における磁器発祥の地ですが、伝来の祖は中国です。流れる時代の中で進化を遂げ、別の土地で、形を変えて残っています。
伝統工芸品の需要が低迷している今、変わり方が問われています。海外に展開することで新たな波が生まれ、新時代を切り開く商品を作ろうと、作家も我々も必死にもがいています。2019年にニューヨークで展示会を開いたことは、そのための大きな一歩でした。

華仙さんの作品
有田焼作家・華仙さんの作品

Q4・挑戦の場は、なぜ米国ニューヨークなのでしょうか?
A・文化の合流地点 新たな可能性に満ちた唯一無二の都市

NYは「人種のるつぼ」と呼ばれ、人種、民族、文化、宗教が混在しています。世界中の良いものも、悪いものも集まっては交わり、新しいものが日々生まれる唯一無二の大都市です。先ほどお話ししたように伝統は進化しなくては続きませんし、文化は流れるものです。今は、日本の九州という地で花開いている伝統工芸品も、流れてどこで花開くかは未知です。ただ、NYはその可能性に満ちた街であることは間違いありません。
昨年私自身がNYの地を実際に訪れ、街を行き交う人々、新時代を作る企業が結集する様子を目の当たりにし「文化の合流地点」だと実感しました。我々は今後もNYに挑戦し続けます。また、日本で伝統工芸に携わる全ての人に「NYに行かない手はない」とお伝えしたいです。

RESOBOXで博多の伝統工芸品をPR

●「株式会社RESOBOX」はニューヨークを拠点に幅広い企業を対象にした海外進出支援サービスと、バラエティーに富んだ文化事業を展開しております。アメリカでの展示会やイベント、事業展開をお考えの方はまずは、メールで問い合わせください。詳しい会社概要やこれまでの事例などはHPで紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

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