海外で挑戦するアーティストや企業担当者をRESOBOXスタッフがインタビューし、経験談やアドバイスを語っていただく「海外挑戦者インタビュー」シリーズ。第六回目は外国人から最も敬遠される食べ物とも言われる「納豆」をニューヨーク・ブルックリンにて製造、販売している「NYrture」代表、Ann Yonetaniさんです。
Q.Annさんはアメリカ生まれアメリカ育ち。納豆を知ったきっかけは?
A.毎年訪れていた日本で食卓に並んでいたこと
私の父親は科学者で、仕事がきっかけでアメリカに来ました。アメリカで働いていた時に同じ日本人である母と結婚し、私は日系アメリカ人として生まれました。私は他のアメリカ人の子達とともに育ったのですが、毎年両親の実家である日本の家に帰省していたため、滞在中は彼らと同じ普通の日本食を食べていました。特に特別扱いもされていなかったので、納豆も食卓にはよく登場していました。そのため、私にとって納豆は普通に慣れ親しんだ味だったのです。
Q.納豆のブランドを立ち上げ、起業することは長年の夢だったのですか?
A.実は考えたこともありませんでした
私が幼い時から興味があったのはアートと科学。ただアートは本業にしなくても生涯関わっていくことができると思ったので、父と同じ科学の世界を選びました。Ph.d(哲学博士号)取得後はColumbia University, Harvard Medical Schoolなど、様々な研究機関で微生物学者として仕事をしていました。ただ「食」への関心は常にあり、食と科学をコラボレーションして何かできないかと考えるようになりました。様々な出来事が重なって自然と「起業」という道に導かれていきました。
Q.現地の日本人でない人々へのアプローチ方法は?
ターゲットによってアプローチ方法は変えています。
今、私たちはニューヨークだけではなくアメリカ全土に商品を届けています。微生物学者としての知識を生かして科学的な面から商品をアピールすることもあればまだまだ知られていない日本食として紹介することもあります。例えばニューヨークはヘルスコンシャスな人が多いだけではなく、常に新しい素材を探している人やレストランが多くあります。そのためオーセンティックな食べ方だけではなく他の料理の要素を取り入れたレシピを独自に開発しソーシャルメディア(@nyrture, @newyorknatto)などを使って発信もしています。新しいレシピは常に我が家でテストしています。
Q.アメリカでの納豆の現状をどのように捉えていますか?
納豆はまだまだ認知度の低い食べものです。ただ、探しているお客さんは徐々に増えてきていると感じています。私たち開発段階からNYrtureの商品、そして納豆を購入されるお客様は感度が高く、サステナビリティーへの関心が高い方が多いだろうと予測していました。そのため、容器も繰り返し使え、こちらの方にも馴染みのあるガラス瓶を採用しました。その甲斐あってか今ではオーガニックショップだけではなく、ハイエンドなグローサリーショップからも問い合わせをいただき商品を卸しています。
Q.今後NYrturewをどのようにしていきたいですか?
直近の目標は商品の幅を広げるのではなく、現在の納豆4種類に集中して売上額を伸ばしていきたいと考えています。またブランド構築の観点から、想像力豊かで私たちと共に納豆の可能性を広げてみたいという一流シェフとのコラボレーションについても積極的に行ってきたいと思っています。
<編集後記>一児の母でもあるAnnさん。毎日ご自宅のキッチンは実験室だと言います。子育てとビジネスを両立させながらもその疲れを感じさせず、シェフとのコラボレーションやレシピ開発を生き生きと語るその姿はニューヨークの女性起業家そのものでした。今後もAnnさんが広げるアメリカでの新しい納豆の展望が楽しみです。
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