前回の記事では、 Tarturumies というブランド名でRESOBOXのあみぐるみ展示会に出展した人気作家・マリアさんのバックグラウンドやスペインにおける編み物文化についてご紹介しました。今回はニューヨーク進出に至った経緯をお聞きします。
初めてのあみぐるみ展示会で得た気づきとは
「RESOBOXのあみぐるみ展示会のことはSNSを通じて知りました。2019年末にRESOBOXからコンタクトをもらい、主催者の池澤社長に出展しないかと招待を受けたのです。これまで同じような展示会に出たことはありませんでしたが、お誘いを嬉しく思い、いくつかのデザインを出展することに決めました。ニューヨークはスペインから遠く離れていますが、せっかくの機会を逃したくないと思い飛行機で展示会に駆け付けました。RESOBOXの運営メンバーに会えたのも良かったです。」あみぐるみ展示会に出たことがとても良い機会となったと語るマリアさん。自分が大好きなアートを世界中のアーティストとシェアできたのは、類まれな豊かな経験となったといいます。「展示会に直接参加できたことは幸運でした。会場に着いた時、何千ものあみぐるみに共通する最も大切なものは、クリエイティビティーとイマジネーションだと感じたんです。あみぐるみの世界を見られたことは素晴らしく、私に多くのことをもたらしてくれ、参加できたことでたくさんのインスピレーションを得られました。世界中どこに住んでいようとも、あみぐるみ作りをしている人ならぜひ展示会に参加することをお勧めします。とても良い経験になり、得るものが多いですから。」
マリアさんが選んだのは、第二の故郷を代表する絶滅危惧種
第5回を迎えたあみぐるみ展示会、今年のテーマは「絶滅危惧種」。絶滅危惧種に指定されている「レッドリスト」上の動物を模したあみぐるみが世界各国から集まってきました。「テーマがとても面白く、私はいま住んでいるエリアの代表的な絶滅危惧種である海の生き物、ジャイアント・デビル・レイ(和名:ヒメイトマキエイ)」を選びました。」ジャイアント・デビル・レイはイトマキエイ科の中で一番大きいエイで、生息地は地中海沿岸。マリアさんはアルゼンチン人である一方、地中海沿岸のスペインに長く住んでいることから今の居住地こそが「我が家」。その地を代表するエイのあみぐるみを作ることにためらいはなかったそうです。マリアさんのエイはしっかりとその特徴が再現されつつも、どこか可愛らしいフォルムで彼女のこだわりが感じられます。
あみぐるみはこれからも世界中で広がり続ける
現在ではスペインをはじめとしたヨーロッパ東部に浸透しつつあるあみぐるみ文化ですが、その発祥の地は日本。一方マリアさんのように、世界で活躍する海外のあみぐるみ作家はたくさんいます。あみぐるみの今後について、マリアさんはこう語ってくれました。「ひとつひとつのあみぐるみ制作にも反映されているように、日本に古くからある手編みの技術は人々の心をつなげ、世界中に広まってきました。作り手も受け取り手も、あみぐるみを通して日々の生活に大切な意味を感じられるのです。あみぐるみは皆の心の中にある童心を体現し、育みます。これは愛する子供と分かち合える何かユニークなものであり、愛情表現であり、子ども達を冒険へと導くガイドであり、そして必要な時にあなたを笑顔にしてくれるのです。だからあみぐるみ文化は今後も繁栄し続け、住んでいる場所に関わらず人々を繋いでいくでしょう。」
ただ可愛いだけで終わらないあみぐるみの奥深さは、これからも世界中の人たちに大切なことを教えてくれるのかもしれません。