海外進出を目指す日本企業から寄せられた質問に、Q&A方式でお答えする本シリーズ。前回まではコロナ禍のアメリカの現状について中心に解説してきました。第4回目となる本編からは、米国市場に参入するための具体的な方法について紹介します。今すぐ低コストで実践できる具体的な販路拡大の方法も紹介しているので、参考にしてみてください。
Q/同系列の商品を扱う大手のライバル社が既にアメリカへ商品を輸出しているため、勝ち目があると思えません。可能性はあるものでしょうか?
A/非日系市場での挑戦がお勧め。大手を一気に出し抜くチャンスも!
まず基本情報として、米国市場に参入する際に、アメリカに住んでいる日本人や日系人向けに商品を販売する「日系市場」と、現地のアメリカ人向けに商売する「非日系市場」があります。
例えば日本ではとてもかなわないライバル社があったとします。しかしそちらはアメリカではまだ何も事業をスタートしていないというケースや、今回の質問のように輸出をされていているケースでも、非日系市場にはアプローチしていないこともございます。その場合は、一気に出し抜くチャンスです。ぜひアメリカの非日系市場でチャレンジしていただければと思います。
Q/米国市場への参入は全く初めて。どのようにアプローチすれば良いのかわかりません。
A/基本的な方法は「飛び込み営業」「展示会への出店」「紹介」
アプローチの方法は多数ありますが、基本的には「飛び込み営業」「フードショーなどの展示会への出店」「現地の商社などを通しての紹介」の3つでしょう。それぞれ下記の通りです。しかし、皆さんコロナ禍でのアメリカ進出の進め方に興味があると思います。ぜひ次の質問の回答も参考にしてみてください。
①飛び込み営業
これは、アメリカではほぼない方法ですが、弊社がニューヨークの企業に対して何度か実施した結果、成功したケースがいくつもございます。もちろん、それなりの準備が必要ですし、現地へ行く必要や、それが叶わない今は現地で動いてくれるパートナー企業の助けがマストになります。ただ、無視できる方法ではありません。
②フードショーなどの大規模な展示会への出店
全米で開催予定だったフードショーなどの、現地バイヤーが集う大型展示会は、全てがコロナの影響で延期になりました。「アメリカへの進出は大型の展示会。これが初めの第一歩だ」と、聞かれている方も多いと思いますが、おそらく早くても来年の中頃までは開催されないでしょう。
③現地の商社などを通しての紹介
すでにコネクションがある日系の商社などを通し、現地のレストランにアプローチをしてもらう方法です。ただ、商社と契約すればPR活動もしてくれていると思い込んでいる日本企業の方が多いのですが、商社は数千、数万というアイテムを常に抱えているため、余程の特徴がある商品ではない限り期待はできません。確実な方法としては、やはり定期的に小売店の担当者に接触し、自社の商品の売れ行きや現地での反応を聞くなど、自社商品の存在をアピールし続けることが重要です。
結論、商社には輸出作業、現地での在庫管理などを任せる。さらに、日々動ける自社専用営業マンを現地で雇うことがベストでしょう。NYで営業マンを雇うとコストがかなり掛かると思われる方も多いと思いますが、様々な雇用形態があります。興味のある方は弊社までご連絡ください。御社に合った信頼のおける営業マンの紹介が可能です。
Q/現在コロナ禍で、渡米することもままならない状況です。現地へのコネクションもないため、二の足を踏んでいます。有効な方法はありますか?
A/日本に居ながら進められるメールを活用
ずばり、「メール」でのアプローチをお勧めします。
というのも、実際にNYのバイヤーたちと話をすると、実は彼らも悩んでいることがわかりました。具体的には「今までは大規模展示会で、実際にメーカーと話をして仕入れを決めていたが、コロナでその機会がなくなり、自社の顧客から必要なもののリクエストをもらっても、探し出せない。ネットで検索してもライバルの店のECに載っているものを発見するのみで、その先に進めない」とのことでした。また、スーパーなどの小売業の方々も、「消費者の求める商品が日々刻々と変化しているということは感じてはいるが、今まで繋がりのなかったメーカーや新しい商品に目を向けることに労力を割く余裕がない」とのことです。
これはこの質問をくださった方のように、現地でのコネクションがなかったり、新規参入を考えている企業さまにとってはチャンスです。メールでのアプローチはコストも最小限に抑えられますし、やる気さえあればすぐにスタートできます。
Q/メールでのアプローチはすでに何十回とやっていますが、反応がありませんでした。今更やることはないと感じています
A/コロナ禍でニーズも変化 内容の再確認を
まずは、今までのメールが本当に有効なものだったのか再度ご確認いただきたいです。もし完璧だったとしても、コロナ禍で消費者の求めるものが大きく変化し、以前は需要がなかった商品が今は必要というケースもあります。
アプローチは商社に一任しているメーカーさんも多いと思います。それも素晴らしいですが、これからは生産者と消費者がより身近になる時代です。実際に自らアプローチをすることで、新たな知見が得られることも多々あります。
Q/どの小売業者やお店に、どんなメールを送ったら良いのか判断できません。
A/ネットでリサーチ 自社の長所を短文にまとめて送信
まずは自社商品のターゲットとなるレストランや小売業者を「Yelp .com 」などを利用して検索しましょう。Yelp(イェルプ)は世界最大級の口コミサイトで、消費者が店内や料理などの様々な写真をアップしています。これらを見て、自社商品とマッチするお店を探すのがお勧めです。例えば御社の商品が椎茸であった場合、そのレストランが実際に椎茸を使っているのか、またどのように使っているかを判断し、 Google などの検索システムでレストラン名を探し、ホームページからメールアドレスやコンタクトフォームを探してメールを送信するシンプルなやり方です。
注意ポイントは、複数のレストランに同じメールを送らないことです。先ほど椎茸の例だと、いかに自社の椎茸がそのレストランにとってプラスになるかを強調したメールを送ることが重要です。長いメールはほとんどの方はお読みになりませんので、短く簡潔にまとめるのがポイント。
またよくある失敗は、自社の全ての商品が載った重いPDFファイルの添付。これは避けた方が良いでしょう。代わりに必要と思われる商品数点の写真や紹介文をまとめるのが良いと思われます。
もちろん返信をもらった後にカタログを送るケースはあると思われますので、常に英語版を準備しておく必要はあるでしょう。その後、サンプルをリクエストされるケースがほとんどですので、繋がりのある商社さんや現地で雇用されている営業マンにすぐ連絡し、店舗に届ける流れになります。
ちなみに「電話はどうなの?」という質問をいただくことがありますが、ほとんどのケースでとってもらえません。何度も電話をすると、それが原因で嫌われることもあるためお勧めできませんね。
ーまとめー
海外出張ができないから海外進出が進まないと考えている企業さまも多いようですが、実際にはすぐに始めることも可能です。中でもメールは、今だから効力を発揮でき、コストもかけずに始められるアプローチの手段です。ぜひ、ピンチをチャンスに変える一歩を踏み出してみてください。
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【解説】池澤崇
RESOBOX代表取締役社長。2005年にニューヨーク移住、邦銀勤務・大学院進学を経て、11年に起業。現在同市内で日本文化スペースやレストランを運営。日本企業(主に中小企業)の米国進出の支援事業も行う。19年より経済産業省所管中小企業基盤整備機構の国際化支援アドバイザー就任。
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