海外進出にはコストも手間もかかる中、自ら国外の現場に出ていく必要性を説き、それも一度きりでは意味がない、継続することが大切だと語る愛知県食品輸出研究会の平松さん。これまでの記事で、平松さんがどのような戦略と過程で海外進出を実現してきたかご紹介しましたが、継続の重要性を実感した理由は何だったのでしょうか?
海外の現場に出ていかないと絶対に分からないこと
第一に、複数回に渡って直接出て行ったからこそ現地の食文化の違いや、そこに自社商品を合わせる必要性を実感できる点があります。これについては過去の記事でもご紹介しましたが、他にも理由があるのです。「例えば麺のマーケットを見るとします。愛知県にはきしめんという特徴がある麺があるが、同じ麺というカテゴリーだとパスタの世界はものすごく広い。パスタだけでなく、もう世界中麺だらけで、ご飯は少数派なんです。それも世界のご飯マーケットの多くを占めているのは台湾やベトナム。世界に出てみてこれを実感しました。私は普段佃煮マーケットを見ているので、他の業種と一緒に海外に出てみると、違いに驚きます」と語る平松さん。愛知県食品輸出研究会は、原則加入社それぞれ取り扱う食材が違うので、それぞれのマーケット特徴は各社が現場に出て実際に体感しないと、教えられるものではないのです。「僕の経験を語っても、業種が違えば事情は全く異なります。だからとにかく世界に出て、自分の目で確かめて欲しいんです」回数を重ねるごとに、細かな違いや対処方法もわかってくる。これが継続を勧めるひとつ目の理由です。
継続は、人脈作りにつながる
平松さんが上海の展示会に出たとき、たまたま日本語が得意な中国人バイヤーから声をかけられ、彼の会社で話をしました。そのバイヤーは「私は3年展示会に来てくれるとこの人は本気だと思う。そして5年目くらいからビジネスの話ができるようになる」と語ったのだそうです。せっかく多額の費用をかけて海外進出をしても、一度や二度会って名刺交換をしたくらいでは、取引まで話が繋がらないということなのです。1回あたりの出展コストが高く継続的な補助金も見込めないなら、一度にすべての予算を費やさず、なるべくコストをおさえたうえで継続して販売活動を行うことを私達RESOBOXも具体策とともに常にお伝えしています。慣れない中1回きりの出展では、短期的な成果が出たとしても、長期的効果は望めないのが一般的だからです。実際に、展示会に出てバイヤーに目をとめてもらったのはいいものの、語学の問題や直接コミュニケーションがとれないことなどからその後に繋がらなかった例を多く見てきました。平松さんが「できるだけ5年は連続して行きたい」と決意しておられるように、5年をひとつの目安として予算を配分すると軌道に乗ることが多いようです。
継続出展して効果が出れば、行政から声がかかることも
継続して海外に進出していれば、それだけ成果も出しやすくなります。一方海外進出の補助金を設定している機関は、その環境整備のために、すでに進出している企業にアイデアや意見を求める他、海外展示会の主催計画などがあれば出展企業を探していることも。「我々のパフォーマンスが良いと、それが関係各所の目に留まることがあります。経産省や行政がやろうとしていることに参加しないかと声をかけてもらったり、パフォーマーとしておいでと言ってもらえたりする。県主催で海外で愛知県フェアをやるときなど、公募でやるとなかなか集まらないものの、我々に声をかければ芋づる式に入ってくるので。良い関係性を作れています」と語る平松さん。さらに、ご自身の海外進出の継続は補助金を使ってこそ成し得たものなので、経験から得たものを会の他企業含め各所に還元できるように努めているということです。まだ海外進出に成功している中小企業の数が多くない今だからこそ、そのパイオニア、また第一人者として立場を確立することには未来に向けて大きな意味があります。
これまで平松食品の海外戦略を中心にご紹介しましたが、すでにお伝えしたように、愛知県食品輸出研究会は 白醤油やうなぎ、きしめんなど様々な食材を扱う企業で構成されています。個社単位ではなく、会単位での海外進出戦略について、次回の記事で詳しくご説明します。