RESOBOX広報の末永です。皆さんは「菰樽」と聞いて、それが何がすぐに思い浮かびますか? 今回は日本の伝統文化の一つである菰樽を進化させ、世界へ発信する企業をご紹介します。まず、菰樽についてご説明します。江戸時代にお酒を運ぶために作られた木製の樽で、現在では正月や祝宴の際に鏡開きなどで使われています。結婚式で新郎新婦が幸せの象徴儀式としてお披露目する姿や、プロ野球の優勝セレモニーで選手が木槌で樽を叩く姿は印象的ですよね。
強みを生かして新製品を開発
いかにも日本らしい菰樽がニューヨークでどのように評判を得たのか気になりますよね。それには新たな挑戦と戦略がありました。菰樽を製造されている岸本吉二商店(兵庫県尼崎市)は、まず米国での展開にあたり、新たな価値を創出しようと考えました。菰樽の特長の一つが「丈夫」さ。大きいものでは一升瓶20本分の酒が入り、その重さに耐えうる強度で制作されています。丈夫さと、どっしりとした形の安定感を生かせるものとして選んだアイテムが「家具」。テーブルやスツール(背もたれのない椅子)などを米国向けに作りました。
アンケート収集でより米国向けに
完成品は、弊社ギャラリーでお披露目しました。まずはオープニングのデモンストレーションとして日本の伝統文化、鏡開きでスタート。岸本吉二商店の制作スタッフは、振る舞い酒でニューヨーカーと親交を深めました。来場者は、実際にテーブルを囲んで話をしたり、座ったりして、酒樽の感触を体感しました。また、展示期間中にギャラリーを訪れたニューヨーカー500人にはアンケートを実施。結果を通して新たな米国向けデザイン、またビジネス展開のアイデアが生まれるきっかけにもなりました。さらに、この商品は2014年度中小企業庁JAPANブランド育成採択事業にも選定されました。
世界の日本食店をターゲットに
その後、経済産業省主催の「クールジャパン・ワールドトライアル インメキシコ」にも参加。ここでは、メキシコシティの日本食店より酒樽の受注を獲得できました。
岸本吉二商店は「日本の伝統をより多くの人に身近に感じてもらいたい」という思いから、家庭用や店舗ディスプレイなどで使用する業務用商品も幅広く展開されています。「日本」を視覚で訴えるのに有効な菰樽が、海外の日本食店で重宝されることが確認できた事例です。そして日本食店は世界中、どこにでもあります。そう考えると市場は無限大ですね。強みを生かせる市場がどこにあるのか、ターゲットをどこにしぼるのかを考えて事業展開を進めると効率よく受注できます。
また、今回の事例は「菰樽」は「酒樽」という固定観念にこだわらず、商品の特長を生かした発想の転換が功を奏した案件でもあります。RESOBOXでは、今後も日本の伝統文化を進化させながら、世界に広げる活動に注力していきます。海外で新商品を展開したいと考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。