2021年夏時点・NYのコロナ事情 店舗状況など最新の情報について

2021年夏時点のNYのコロナ事情

ニューヨークで小さな店舗から立ち上げたい方や、小規模ビジネスを始めたい人に役立つ情報をお伝えするシリーズが同名のポッドキャスト番組でスタートしました。基本的には同番組に寄せられた質問に答える流れです。今回は直近(2021年8月14日現在)のNYのコロナ事情に関して、ビジネス的な観点から考察しています。この記事では内容をコンパクトに分かりやすく書いておりますが、より詳しく解説はポッドキャストで聞いていただけますのでぜひご視聴ください。

Q1・コロナ禍における、現在のNYの状況は?
A/景気回復が顕著 

日々、状況は変わっていますが、数日前に発表された7月の雇用統計を見る限りはかなり強い統計が出ており、非農業部門雇用者数は大幅増、失業率はコロナ後最も低い値であり、コロナ前と近い数値である5.4%まで低下。景気回復が顕著に見られます。
特にセクターでいうと娯楽やホスピタリティが最も伸び率が高く、私の周囲もキャンプや旅行に出掛ける人が多数おり、国内線も混んでいます。特にハワイなど、他州より比較的ワクチン接種が進んでる場所は、アメリカ人の観光客で混雑している状況です。
全米の半数程度の州は、コロナ対策の失業保険の追加給付を打ち切りはじめていて、9月末には完全に停止する予定です。今まで失業保険と給付金が通常の給料と比較し多くなる方々、また秋より学校が始まることで子供を持つ親、特に女性がが労働市場に戻り始めるため、失業率はさらに低くなっていくと見るのが基本的な流れですが、デルタ株始め様々な要因があり、そこまで大きな変化はないと言われています。

Q2・NY市内も観光客が訪れるなど、賑わいを取り戻しましたか?
A/以前ほどではないが戻っています。ただしオフィス街に人通りはなし

私自身は様々なリサーチのため日々マンハッタンを回っておりますが、ニューヨークも他州から旅行に来られている方が増えてきた印象です。ただしオフィス街は、現在も閑散としております。
NYの名物である、ブロードウェー、メトロポリタンオペラなどが順々に開始予定となっており、Little Island など目玉施設もオープンし、多くのイベント(特に野外のもの)が夏場に企画されております。

Q3・ニューヨークの小売店やレストランの状況は?
A/需要はあるが、商品が届かず苦戦

コロナ禍ではオンライン販売が主流となりましたが、ワクチン接種が広がった5月辺りから多くの人々が実店舗での買い物を再開、小売店もレストランもマスク着用など規制はありますが、コロナ前とほぼ同様に営業をしております。屋内飲食が再開し、かつパンデミック時に開始されたNYCオープンレストランプログラム(全ての飲食店は申請費なしで屋外席を設置することができる)が引き続き有効であるため、レストランは通常時より席数が多くなり(二倍程度の収容人数になる店舗もあり)6、7月と大賑わいとなりましたが、多くの問題があり経営は厳しい様子。詳しくは、「Q8・店舗スペースの状況は?」をご覧ください。

Q4・ワクチンの普及はより進みそうですか?
A/現状7割が接種完了 これ以上は難しそう

アメリカではワクチン接種が進んでいると言われているのですが、結局のところ現状の摂取率は1回目を終えた人が70%です。このまま行くと100%は目前なのでは?と思われがちですが、残りの30%の方は何らかの理由から「受けたくない」という考えの方です。そのため、接種を促そうと「地下鉄の定期券を1週間分をプレゼント」「自宅まで出張してワクチン投与するサービスを展開」など、州ごとにさまざまな施策を実施。しかし、無理に受けさせようとすると、訴訟になる可能性も大いにあり、各企業、対応に苦慮しているのが現状です。
また日本と同様に、米国でもデルタ変異株が広がっています。周囲の金融関係の方と話すと、「そこまで深刻ではないんだろう」という見解の人が大半でしたが、未曾有の事態で先が見通せないため、株価も乱高下することも考えられます。

Q5・景気回復に伴い、オフィス街に人が戻ってくるのでは?
A/社員全員にワクチンの接種を促したり、摂取状況開示の義務付けなど行うものの、先行きは不透明

数カ月前までは7〜9月に向けて、各企業オフィスに人を戻そうという流れになっていたのですが、デルタ変異株の蔓延が顕著になり現在先行きは不透明です。
モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、 Google、Facebookなどの各企業はオフィス勤務を再開する前に社員全員にワクチンの接種を促したり、または摂取状況の開示の義務付けたりするところもありますが、例えばGeneral Electric(GE)は義務付けていないなど、必ずしも接種がマストな訳でないなど、各社対応はバラバラです。
Twitterのようにニューヨークのオフィスを一度再開したがすぐにクローズしてしまい再開の目処は立っていない状態のところもあります。

Q6・マスクやワクチンパスポートは浸透していますか?
A/多くの人が両方とも携帯しています

マスクに関しては、ニューヨーク市としては「野外では義務ではないが、推奨する」という対応。ただ、街中の多くの人がマスクを着用しています。
ワクチンに関しては、8月16日から屋内ダイニング、フィットネスなど屋内施設、娯楽施設の従業員や来場者は、ワクチン接種の証明(紙やアプリで表示できるもののどちらでも良い)が義務付けられることになりました(調整期間を経て全面的に適用されるのは9月半ばから)。

Q7・これだけリモートが浸透すると、オフィスが再開しても出勤する人が大幅に減るのでは?
A/実数値だと空室のオフィスが目立っています。今後は「ハイブリッド」が浸透しそう

オフィスに出社する日と、リモートワークの半々にする「ハイブリッド」が浸透していくように思われます。しかし、同時に「全部リモートにして欲しい」「既に他の州に移動した人たちはどうすれば良いのか」という議論が起き始めています。企業としては州ごとによって異なる税金の関係で給料の再計算が必要になるなど問題が山積。まだ明確な答えは出ていない状態です。
では、実数値として「実際にどのくらい人がオフィスに戻ってきてるか」ですが、マンハッタンの空室率は6月の時点で18.7 %でパンデミック前の2倍。ですので、かなりのオフィスが空室の状態になっている状態です。

Q8・店舗スペースの状況は?
A/空きスペース増加に伴い、大幅な家賃値下げ。新規開業もないわけではないが、例年に比べ少数

リテールスペースは、地域差はありますがNY全体として20〜25%の空室率とのことで、オフィスよりも少し酷くなっています。しかし、実際に毎日のように街を回っている私の感覚だと、この数字よりもさらに多いように感じます。
ただ、2021年の1〜7月に、マンハッタンで1700軒のリテールの契約があったというデータが出ています。契約とは、既存のレストランのリニューアルも含まれているため、必ずしも新規で1700軒のレストランが開いたわけではありませんが、ある程度の契約数はあります。実際のところ、大幅に家賃が下がってますので、そこに目をつけて新規開業しているレストランもあります。レストランだと、パンデミック中に冷蔵庫などさまざまな設備を残したまま閉店した店舗も多いので、射抜きという形でいくと良い物件は揃ってる様子です。ただ、基本的には体力のある大手チェーン店が新しい店舗を開いているケースが多いです。

Q9・店舗経営者のリアルな声が聞きたいです
A/従業員不足など問題山積

この直近、色々な小売店をやってる経営者の方々と話をする機会があったのですが、彼らの現状についてまとめてみました。

①従業員が足りない
コロナの支援金が出ているため、すぐに仕事に戻る必要はない状況が続いており、なかなか従業員が戻ってこない状況が続いています。NYの小売店や飲食店では、学生やアーティストのバイトが多いのですが、授業がリモート化していること、またエンタメ系の仕事がまだ100%戻ってきていないことも要因として挙げられます。
また、ワクチンは緊急使用が許可された状況に過ぎなく、FDAの正式承認がある状態ではないので、接種したくないし、戻りたくないという人も一定の割合でいるようです。

②インフレ
特に西海岸の港などコンテナが積み上がっていて、輸入品が港で止まっている状態が続いています。また、コロナウイルスの影響でトラックドライバーの数が足りないため港から都市へ運送が遅れており、結果、仕入れ値が高くなっています。高級レストランのシェフにヒアリングした際には、特に海外から取り寄せている食材が高く、しかも届かないことが多く困っているとのこと。さらに従業員数を確保するために賃金を上げざるを得ないため利益が出にくいのが現状。AmazonやWalmartなど大手チェーンなどは、他社の賃金にさらに$2, $3という上乗せをするだけでなく契約時に1,000ドルなどインセンティブを付けているケースもあるようで、小さな店舗は太刀打ちができない状況です。

③救済処置
連邦政府や州、市などが各々提供しているコロナ対策の補助金・支援金が多数ありますが、そのうちの一つとして最近話題になったものが「Restaurant Revitalization Fund」。 SBA (Small Business Administration)という連邦政府傘下の機関が出しているレストラン向けの支援金制度で、37万軒のレストランが申し込みましたが、すぐに資金が底を付き、閉となり、結局3分の1の店舗しか資金を受け取ることができませんでした。

④残っているレストランは大忙し ただし増益ではない
コロナ禍を耐え、再開できたレストランは5月よりかなり大忙しの様子ですが、上記の通り、従業員の賃金、仕入れ値など営業コスト自体が上がっている為、利益が伸び悩んでい流というのが実態のようです。

Q10・生き残れた店の特徴はありますか?
A/スピーディーなオムニチャネル化

さまざまな要因があり、成功する理由というものはもちろんないのですが、一点のみ挙げるとなると、やはりオンラインにどれだけ対応できたかという点かと思います。リテールのオムニチャネル化の事例など、今後まとめてお話しする機会を設けようと思います。

余談にはなりますが、NYで最も若者が多い地域の一つであるロウアーマンハッタンにスペースを持っており、そこで「日本の屋台村」を作ってくれる日本人経営者を探している不動産オーナーがいるのですが、内装などの店舗デザインをされる方を含め、このスペースの運営にご興味がある個人・企業様がいらっしゃいましたらお繋ぎしますので是非お声掛け頂けたらと思います。

Q11・日本では現在各地に緊急事態宣言が出ており、8月末頃に今後の方針が決まりそうですですが、NYの今後はどんな流れになりそうですか?
A/レイバーデーが起点。年末に向けて大量消費を見込むイベントも目白押し

9月6日のレイバーデーは、オフィス勤務、また学校など教育機関が再開になるかどうかが判明する起点になる日ですので、その時期にコロナの状況、雇用統計などを再確認することをお勧めします。

また、アメリカではBack to schoolセール、ハロウィン、サンクスギビング、クリスマスなど年末に向けて大量消費を見込むイベントが目白押しとなります。