日本人にとって四季とは特別なものです。散りゆく桜に切なさを、日々寒くなる初冬の朝に1年の終わりを感じては、物思いにふけったりします。俳句の季語のように季節を表す言葉はたくさんあり、年中変わる美しい景色こそが日本のアイデンティティだと思う方も多いでしょう。
海外にも四季はある
気を付けなければいけないことは、海外進出をする際にこの「日本には四季があること」を売りにしすぎないことです。なぜなら、欧米含め多くの国には四季があります。ニューヨークでも桜は咲きますし、夏になれば海に行き、紅葉もあれば、雪も降ります。「オータム・イン・ニューヨーク」という映画にもあるように、特に秋のニューヨークはセントラルパークをはじめとした紅葉が日本と同じくとても美しいです。違うのは、日本人が四季に対して特別な思いを持っていることなのです。その自覚を抜きにして「日本には四季がある!」と言っても、「いや私の国にも四季はあるけど」と思われるだけでしょう。
アメリカ人には伝わらない「四季に対する特別な思い」
四季をありがたいと思う気持ちを外国人に理解してもらうことは難しいです。日本には季節に関する行事がたくさんありますが(お花見や紅葉狩りの他、入学式に桜は欠かせませんよね)、欧米での行事は季節ではなく宗教や文化に基づいていることも背景としてあります。このため日本の象徴として四季をテーマに商品を作ろうとしたとき、日本人の感覚で作ってしまうと真意が伝わらない事がよくあります。アメリカ人も桜は好きですが、満開の桜がただ単に美しいから好きなのであり、そこに込められた複雑な心情(散り際の潔さや一瞬の盛り、場合によっては命に例えることなど)まで考えている人はあまりいません。商品に桜の模様をつけて「これが日本らしさだ!」と言っても、「いや私の国にも桜は咲くけど」と思われるだけでしょう。
四季をテーマにしない方が無難
その季節しか見られない景色がウリの観光地などは別ですが、一般的な商品で日本らしさを出すために季節をモチーフにするのは、難易度が高いことが多いです。また、スイカと言えば夏、赤とんぼといえば秋、といった日本人の暗黙の了解が通じないことも少なくありません。そして日本らしい商品が欲しいと思っている人よりも、便利で使い勝手が良い商品であれば、どこの国で作られていても気にしないという人が多いというのもまた事実。商品開発の際は、いかに日本らしさを出して個性で勝負するかよりも、現地をしっかりマーケティングリサーチし、どのような商品であれば受け入れられるかを知ることが大切です。