NYの飲食店経営者が米国デリバリーアプリについて語ります・前編

米国のデリバリーアプリ

2000年代初期に登場し今やアメリカにて知らない人はいない「デリバリーアプリ」。この20年の間、さまざまなアプリが出ては消え、合併を繰り返し今まさに成熟期を迎えています。

デリバリーアプリの利用者は毎年増え続けていますが、特にコロナ禍の自粛期間中に大幅増となり、大手の一角であるDoordashがついに20年12月に上場となりました。
ここ数年日本でもUber Eatsを始めとし欧米系のアプリの参入が相次ぎ、利用者はうなぎのぼりとなっておりますが、

アメリカではそもそもどんなアプリがあるの?
盛り上がっているように見えるが実際はどうなの?
これから先の見通しは?

など、NYで文化スペースと共にレストランを経営し、自ら数多くのアプリを日々使い過去に数万件のデリバリーオーダーを捌いて来た僕が自らの経験を基に本日から2回に渡り語っていきます。

アメリカで飲食店を開いてみたいという方、日本でデリバリーアプリを立ち上げたいというエンジニアの方、ビジネスには興味ないけどただ食の話ならなんでも興味があるんだ、という方も含め、皆さんにとって役に立つ情報になればと思っております。

また、ポッドキャストではこの記事の内容をより詳しく語っていますので是非ご視聴ください。

デリバリーアプリを導入するには? 手数料は?

デリバリーアプリにレストランが登録する場合、初期費用は無料で解約も自由です(一部Uber Eatsなど$500程度の初期費用がかかるケースも有り)。サービスを提供している各社のホームページに行き、自社レストランの情報を入力。数日内に連絡が返ってきますので、会社情報(Tax IDや飲食店の営業許可証など)を提出し、早いケースですと一週間ほどで手続きが完了、その日から注文を受け始めることができます(コロナ禍中は全国的に出店リクエストが増えたため数カ月ほどかかるケースが増えています)。

契約としては、注文金額に応じて手数料が掛かるというもの。この手数料が曲者で、平均すると商品代の30〜35%と結構高額。飲食店の原価率は平均で30%程度であり、このアプリ手数料を払った残りの35-40%で食材の購入費、人件費、光熱費、などをカバーした上で利益を出さないといけません。原価率が高いレストランはそもそも導入するメリットは無いかもしれません。

パンデミックで困窮する飲食店を助けようと5月終盤には30〜35%だった手数料を一律20%(5%がアプリへ、15%が配達へ)にする条例が出ました。中国ほどではないとしても、民間企業が提供するサービスに対して政府がこんな風にグッと介入してくるところがアメリカらしいですよね。

確かに飲食業界は雇用という面で大きな割合を締めているので、そこをサポートしなければいけないという理由に関しては理解できますが、日本ではなかなかあり得ないことでは?

ちなみにこの条例ですが、パンデミック終了後、3カ月程度継続されるとのこと。それまでにどれだけの飲食店が生き残っていられるでしょうか。

米国の「デリバリーアプリ」トップ5を紹介!

ここからが本題です。
まず米国にどんなデリバリーアプリがあるのかをランキング形式で紹介。さまざまなサービスがありますが、おそらく今後勝ち残って行くのは上位の2、3社でしょう。

ちなみに基本的にこういうIT系のことを僕自身が好きなので、うちのレストランでははほとんど全てのアプリを登録して使っています。

1位・ Doordash(ドアダッシュ) (全米シェア50%)
2013年創業し現在料理宅配アプリ業界で50%のマーケットシェアを握る全米最大手。
弊社では2016年から使用中。18年から、ソフトバンクが各分野をリードする成長企業への投資する「Vision Fund」に選ばれ、一気に伸びてきました。他社が都市部に注力する中、ドアダッシュは郊外に目を向け、登録レストラン数を増やすことに注力してきたのがよかった。郊外だと個人より家族単位での注文が多いため一件あたりの収入が大きくなります。

2位・Uber Eats(ウーバーイーツ) (全米シェア23%)
コロナ禍によりライドシェア事業が壊滅状態であるUberにとって、唯一の希望の光。
配達ドライバーの位置情報の正確さなど、ライドシェアで培ったデータ量、技術力がサービスの随所に発揮されており、僕らレストラン運営側にとって働きやすい存在。他社のアプリのドライバーは自転車やバイクを利用するケースが多い中、ウーバーイーツのドライバーは、車が中心。

他のアプリのドライバーは雪や雨が降ると仕事を止めがちになり稼働人数が減りますが、こちらは天候に左右されにくく安定感があります。あと、地味に良いポイントですが、レストラン側が見える注文タブレットに「このお客さんは過去に何回うちでオーダーしたか」の表示が出るので、どの人が常連さんかが一眼で分かります。

3位・ Grubhub(グラブハブ) 18%
アメリカで料理宅配サービスといえばまずここ。04年に創業し、市場を創り上げてきた功労者。 13年に同業のSeamless(シームレス)を買収し、17年にはYelpという日本の食べログに似た企業から同業のEat24を買収、18年に大学へのデリバリーに特化したサービスであるTapingo(タピンゴ)を買収… と、着々と地盤を固めているように見えましたが、後発の競争相手に押され直近は厳しい状況に追い込まれています。

昨年はWalmartへの身売り話も噂され、Uberが昨年一時買おうとして大騒ぎにもなっていましたが、その後、昨年6月にデンマークの大手デリバリーアプリ・Just Eat(ジャストイート)に買収されることになりました。

ここは本当にサービスが悪く、システム的にも使い辛かった。同社が派遣してくるドライバーとも何度も喧嘩をしたのを覚えていますね。ただ、買収されてからというもの、多少サービスがよくなっているように感じます。

4位・ Postmates(ポストメイツ) 7%
フードの宅配においては上記3社に比べ規模は小さく、メキシコシティを除き米国以外ではサービスを展開していません。ただ、小売店と提携してフード以外の商品も配達するなどユニークなサービスを提供。Uberに数カ月前に買収されました。

5位・Caviar(キャビア)
登録すればどんなレストランでも掲載され注文を受けられる他社サービスと異なり、同社により厳選されたレストランのみ取り扱うスタンスが受け、一時注目の宅配アプリとなりました。しかし、19年8月にドアダッシュによって買収され、20年10月にシステムも完全に統合となりました。現在もブランド・サービス共に存続しています。

差別化がし難くスイッチングコストが低い

上記以外にも、ターゲットを中国語話者に絞ったHungry Panda(ハングリーパンダ)や、ピックアップのみなので厳密にいうとデリバリーアプリではないですがAslletというものなど多数のアプリがありますが、基本的には各社サービスは全く同じであり、マーケットシェアと同程度の割合で注文が入るという以外の違いはありません。

消費者側にとっても、購入するプロダクツ、すなわちレストランのメニューやその値段は上記どのサービスを使おうが同じなので、どれか一つアプリをダウンロードすれば他社のアプリに乗り換える必要性はあまりないため、上記の順位が大きく変動することはなさそうです。

新しいスタートアップ企業が同デリバリー業界に参入しようとしている動きは見られますが斬新なモデルは現在のところなく、サービスに際立った差がない以上、企業の体力勝負となっているのが現状です。

さらに詳しい話はポッドキャストで!デリバリー業界に関するさらに詳しい解説や、各アプリに対する(文字に起こしづらかった)本音も盛りだくさんです(笑)

1月13日オンエア予定の「NYの飲食店経営者が米国デリバリーアプリについて語ります・後編」では、デリバリーアプリの未来について、業界が抱える問題点なども含め話をして行こうと思います。