海外で挑戦するアーティストや企業担当者をRESOBOXスタッフがインタビューし、経験談やアドバイスを語っていただく「海外挑戦者インタビュー」シリーズ。第九回目は、1908年に創業し、百年以上の歴史を刻む染めものの老舗「巴染工」(岩手県盛岡市)の5代目・東條誠さんです。「伝承と革新」をモットーとし、受け継いできた職人技と最新の機材を駆使し、昔ながらの手ぬぐいや半纏(はんてん)、洋服、タペストリーなどを生産されています。今回は、米国ニューヨークで開催中の個展会場でお話を伺いました。
Q1・11月4〜26日までの約1カ月、ニューヨークのギャラリー「RESOBOX」で、手拭いや半纏の展示会を開催されています。目的や狙いを教えてください。
A・日本の伝統を広げるための第一歩。今後に繋げたい
伝統の技を後世に残すには、日本にとどまらず海外に視野を広げるべきだと私は感じています。本展をRESOBOXで開催することになった経緯は、オリジナル手ぬぐいを始め、暖簾や前掛け、半纏、ユニフォーム、座布団等を発注してくださっている「WUHAO NY」のオーナー・キッペンブロック琉璃さんとのご縁に加え、伝統の技を次世代の職人に伝えていきたいという思いがあります。
会場には手ぬぐいや半纏はもちろん、オリジナルの刺し子を施したジャケットやパンツなどを並べ、ワークショップなどのイベントも実施。オープニングには70人以上が来場してくださり、海外でのリアルな反応や生の声を知ることができました。
Q2・NYはもちろん、海外での反応についてお聞かせください
A・日本のデザイン高評価 ワールドワイドに展開したい
これまでに、2012~16年にワシントンDCで開催された「桜まつり」に3回出店したり、14年にもフィラデルフィアの「桜まつり」に出店したりしました。これらの経験からも、日本のデザインに関心のある外国人は多いと実感しています。ただ、日本人とは感覚が異なるため、どのように展開していくかを模索する必要はあります。例えば、手ぬぐいや半纏ですが、着るものとしてではなくアートとしてインテリア感覚で使用していただくケースが多いです。弊社では、ブラジル人のアーティストとドラゴン柄の半纏を作った経験もあります。今後も外国人デザイナーとコラボレーションし、ワールドワイドな商材も手掛けていきたいですね。
Q3・海外での展開についてどのような構想をお持ちですか?
A・伝統と革新、両方の技術を駆使 海外企業の製品も手掛けたい
将来は、海外の企業からのオーダーを増やしていけるようになりたいです。当社の強みは「昔ながらの染色方法を残していること」「最新の機器も揃えていること」「デザイン、染め、縫製を一貫して行えること」です。これらを生かし、あらゆるオーダーに応えられる自信があります。我々の考えでは想像もできないような、海外からの発注にも果敢に挑み、製品にしていきたいです。
Q4・業界の現状をどのようにお考えですか
A・右肩下がり ただし世界に通用する職人技に自信!
業界の現状は、30年前は200社ほどが加盟していた同業者組合も、現在は120社程度まで減少しています。後継者がいる染屋や染工場は少ないため、15〜20年後には50社程度になると予測されています。
ただし、培ってきた技術は間違いなく世界に通用しますし、どのようなオーダーが入っても再現する自信があります。低迷する状況を少しでも打破するためにも、帰国後はNYでの経験を伝え、次回開催など次のステップへ繋げたいと考えています。
●「株式会社RESOBOX」はニューヨークを拠点に、今回ご紹介した展示などバラエティーに富んだ文化事業と、幅広い企業を対象にした海外進出支援サービスを展開しております。問い合わせなど、詳しくはHPをご覧ください