−巴染工5代目・代表取締役社長・東條誠さん編− ②奥深い手仕事の魅力を海外へ発信


岩手県盛岡市で百年以上の歴史を刻む染めものの老舗「巴染工」の5代目・東條誠さんへのインタビュー。第2回目は、受け継いできた職人技を守りつつ、いちはやく最新の機材を導入して事業を拡大した経緯と、今後の展望について伺いました。

巴染工スタッフ

Q5・業界が低迷する中、巴染工さんではスタッフが年々増加。若手の職人が活躍されていますね
A・女性職人も多数採用 志の強さを重視

私が1992年に23歳で入社した当時の社員数は12人でしたが、50歳を迎えた今、31人が働いてくれています。5年前に定年による職人の世代交代が終わり、現在は私が最年長。最年少は23歳、平均年齢は37歳になりました。採用に関しては、最新のデジタル技術も使用する弊社の業態上、デザインが好きな若いスタッフも多数応募してくれます。

また、最近の傾向として、職人で募集をかけると応募者の約9割が女性です。現在当社では女性社員が15名いますが、男性にはないアイデアを聞けるようになりました。
さらに、職場のムードにも変化がありました。年功序列の風潮から、女性が多くなってきたことで工場の空気が和み、皆んなが自分の意思を自由に発言できる環境になってきたように感じます。
当社を選んで採用試験を受ける人は、「仕事すること」だけではなく「巴染工で働きたい」を目的にした、意志の強さが特長です。素晴らしい人材に恵まれ、良い商品づくりができる環境をつくることができ、嬉しく思います。

巴染工 女性職人

Q6・いちはやくデジタル技術を導入した経緯は?
A・時代の流れ察知 独学で勉強

私は、入社して2年ほど職人として修業を積み、その後、1994年に営業に移りました。さまざまな企業や人と接する中で時代の流れを感じ「今後はデジタル技術が必ず必要になる」と確信。アップル社のパソコンを導入しました。当時は1台80万円程度とかなり高価でしたが、将来を見据えて独学で学び、パソコンでデザインをおこせる環境を整えました。導入から1年後くらいから業務でしっかり使うようになりましたね。
その後「1枚からカラーの商品を作りたい」といったオーダーが増え始めた1999年に、デジタルのインクジェットプリンターも導入。しかし、すぐに人を増やすわけにはいかず、昼は営業として働き、帰ってきてデザインを起こし、夜は転写プリンターで印刷…。実績をつくるために、1日の睡眠時間を3、4時間にして、頑張り続ける日々が3年くらい続きました。徐々に売り上げが出て、専門の社員を増やし、今に至ります。

Q7・今一番注力されていることは何ですか
A・自社ブランドの確立

これまで受注生産がメインでしたが、現在、自社ブランドの商品開発に力を入れています。
きっかけは5年前。染めものを暖簾や旗、半纏にするだけではなく、もっと普通の人が日常生活で使える商品にできるのではと、考えるようになったことです。以来、常にアンテナを張り続け、新商品を模索してきました。そして、50歳を迎える今年、インテリアや、シャツ、ジーンズ、ジャケットといった衣類など、新しい可能性を築き上げる環境が整いました。
現在の当社の生産量は、受注生産が売り上げの95%を占めていますが、今後10年で自社製品を生産する割合を40%以上にしていきたいです。染めの良さを最大に引き出せる我々が生み出したオリジナル商材が、多くの人に認められて世界中にファンが増えると嬉しいですね。

手ぬぐい
NY「RESOBOX」での展示の様子 〈Photo by Max Flatow〉

Q8・日本の伝統的な技術に携わっている人に伝えたいことは?
A・魅力ある伝統 継承のためにも挑戦あるのみ!

チャンスは自分で掴みにいくものです。動けるうちにどんどん挑戦してほしいと心から思います。私自身、今回NYに2週間滞在したことで、いろいろな方と繋がり、コミュニティーが広がりました。
昔ながらの感覚を必要とする手仕事の技術は、現代の新しい技術では表現できない奥深い魅力があります。これらを世界に出すことは、職人のやり甲斐とモチベーションアップにも繋がります。私も今回のNY展示を最初の一歩とし、今後意欲的に新たな挑戦をし続けていきたいです。

巴染工スタッフ
巴染工 スタッフ

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【教えてくれた人】とうじょう・まこと  岩手県盛岡市生まれ。1908年創業の染めものの老舗「巴染工」の5代目。受け継いできた職人技と最新の機材を駆使し、昔ながらの手ぬぐいや半纏(はんてん)、洋服、タペストリーなどを製造販売する

巴染工のHP 
NYで展示の英語ページ 

●「株式会社RESOBOX」は、日本文化と多文化が響き合い、新たな文化を創出するスペースをNY市内で展開しております。日本文化を核にした展覧会などをお考えの方はご相談ください。また、上記のような文化事業に加え、海外進出支援サービスも行っております。マーケティングリサーチやイベント出店、米国に合わせた商品開発に関する相談はもちろん、NY在住のアーティストとのコラボレーション企画などもご提案できます。興味がある方はHPをご覧ください。問い合わせはこちらまで。