【コロナ禍の海外進出 徹底分析①】日本企業の進出は可能? 米国NY市場のニーズ&トレンドの変化 

コロナ後のトレンド

新型コロナウイルスの影響により、世界中の様々な分野が大きく変化しています。世界最大の食品消費国である米国市場の魅力は今後も揺らぐことはないと思われますが、実際にどのような変化が起きているのか、またその変化に対してどのように対応していくべきかを弊社の直近数カ月の事業と、多方面にわたるニューヨーク地場の商社、卸、小売店へのヒアリングをもとに分析。海外進出を目指す日本企業から寄せられた質問をメインに、Q&Aシリーズでお伝えします。

Q/ ニューヨークの現状は?
A/全ての事業は再開しても良い状況 

ニューヨークでは、2020年3月にロックダウンが始まり、当初は市民の多くが自宅待機となりました。ニューヨーク州は経済活動再開を全4段階に定めており、現在は最も緩い第4段階(フェーズ4)。全ての事業は再開しても良い状況です。
ただし、観光客はまだ戻らず、街が活気を取り戻したわけではないため、NYCに店舗を構えるレストランや小売店などは売り上げが立たず、高額な家賃が経営を圧迫。閉店に追い込まれるケースが急増しています。
日本企業の主要な顧客である「日本食レストラン」に限定しても、半数以上が閉店。オープンしていても以前と比べ3、4割程度の売り上げになってしまっています。高級店ほど影響が大きく、市内に70店舗あるミシュラン星付きレストランのうち半数以上は営業再開できずに閉店したままです。

Q/NYの飲食店では、屋内飲食がまだ一部でしか許可されていないと聞きました。各社どのような対策を行なっていますか?
A/デリバリーの拡大やECサイトの設置、配達のスタートなど

ロックダウン後、ニューヨーク市のレストランは、デリバリー、テイクアウトのみの営業となりましたが、9月30日に収容人数の25%を限度にインドアダイニングも再開されています。とはいえ、新たなシステムを導入するなどの対策はマストです。

NYCの屋外ダイニングの様子
NYCの屋外ダイニングの様子

日本でも現在サービス拡大中の「Uber eats」をはじめとする配達サービスは、米国では以前から普及していました。これらのサービスをさらに拡充するのは当然のこと、レストランであっても店内で肉や野菜の販売を始めたり、ミールキットなどを制作・販売するなど可能な限り売上を上げようと努力しています。
一方、スーパーなどの小売店では、ECサイトや自前のトラックなどを活用し、全米で配達を始めたお店も多数あります。

Q/ NYでも「おこもり需要」でスーパー等の売り上げは伸びていますか? また、レストランは閑散としているのでしょうか?
A/地域で天地の差。居住区には繁忙店 オフィス街は現状壊滅的な場所も 

弊社の顧客である米系スーパーにヒアリングすると、ロックダウンで一時的に売り上げが落ちたものの、現在ではコロナ以前の集客数まで戻してきてるとのことです。ただし地域差があり、ウォール街やミッドタウンといったオフィス街はほぼ壊滅的で、今後もしばらくは人が戻る気配はありません。
一方、居住区のエリアではかなりの忙しさを取り戻したレストランもあります。弊社もNY市内で2店舗を経営していますが、居住区にあるLIC店は、これまでにない繁忙ぶりです。特に4、5月は通常時の8倍程度のデリバリーやテイクアウトオーダーがありました。少し落ち着いた現在も、例年と比べ2倍以上のオーダーが続いています。
またマンハッタンの飲み屋街・イーストヴィレッジでも週末は若者が集まるなど、限定的ではありますが少しずつ活気を戻しつつあります。
また、スーパーでは「カーブサイドピックアップ」と呼ばれる、新サービスが登場。ネットでオーダーし、店舗の横に設置した特設窓から、商品を受け取る仕組みで、導入店が急増しています。規模に関わらず、どんな店舗もネットを駆使しないと生き残れないだろうという話は、色々なオーナーさんと話して一致しています。

ーまとめー


現在、NYはもちろん、世界各地で様々な方が新しい取り組みを始めている過渡期です。これからも引き続きどのような変化があるかを注視し、新しいビジネススタイルについて検討すべきでしょう。


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【解説】池澤崇
RESOBOX代表取締役社長。2005年にニューヨーク移住、邦銀勤務・大学院進学を経て、11年に起業。現在同市内で日本文化を発信する2店舗を運営し、レストラン事業や文化事業を展開。また、日本企業(主に中小企業)の米国進出の支援事業も行う。自社スペースでのイベントは年間50回以上開催し、コロナ禍の現在は主にオンラインで実施している。19年から経済産業省所管中小企業基盤整備機構の国際化支援アドバイザーとしても活動。

池澤崇

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