これまで愛知県食品輸出研究会がどのような活動を行ってきたのか、またその会長を務める平松さんご自身の海外進出戦略をご紹介してきました。今回は恐らく気になる方が多いであろう、コスト面のお話。大企業であれば多額の海外進出予算も比較的確保しやすい中、中小企業にとっては至難の業になりがちです。平松さんがこの問題にどのように対処しているのかをお伺いしました。
最初は自己資金で海外進出、でも継続するには限界が
1998年から商社を通じて台湾に佃煮輸出を始めた平松食品。当時は年間約3回、100キロから300キロほどが出荷されていたそうです。2006年からは、商社だけに頼るのではなく自ら台湾の展示会に出品することで販路を開拓するように。しかし、台湾の展示会に初めて出展した際、参加費用のほか渡航費なども含めた総費用を計算してみたら、1回100万円ほどかかっていたことが分かりました。展示会だけでも1回40万円程度のコストがかかるので、中小企業にとっては大きな痛手です。 早急に利益を出し、コストもなんとか3分の1程度に縮小できないかと考え始めました。そこで補助金を活用することになったのです。
補助金・助成金採択により、活動の幅を拡大
こうして2007年から補助金を獲得した平松さん。一口に補助金(助成金)と言っても、政府が主導しているものから県や機関が設定しているものまで種類は様々です。業種や進出地域によって、対象が限られる補助金もあります。平松さんが2008年から活用したのは、経済産業省の地域資源活用促進事業。この補助金を得ることによりニューヨーク進出費用を賄うことができ、2011年までに4回のニューヨーク展示会に参加してきました。その後はサンフランシスコなど、全米に出展の場を広げています。進出地域の拡大や、何年も継続して出展できている背景には補助金の存在があったのです。
コストカットの裏技を会でシェア
愛知県食品輸出研究会では、補助金に関する情報交換の他、どのように海外進出に関わる費用を削るか、先輩企業がアイデアを提供しているといいます。「例えばWi-Fiルーターひとつとっても、日本を出る時にレンタルしていくと1回1万5000円くらいかかることがある。でもネット通販であらかじめ買っておけば、最初は買い取りでお金がかかっても、3回使えば元が取れる。展示会の設営資材についても、現地で廃棄できるものを選ぶことで持ち帰りのコストを削減できるんです。初めて海外に出ていく会社でもコストをおさえて参入できるよう、手助けするのも研究会の役割だと思っています」と語る平松さん。補助金のようなインパクトが大きい予算獲得から、比較的小さいコスト削減まで、あらゆる費用対策方法を蓄積・共有しているのです。
補助金を得続けられる保証もなく、決して少なくない費用がかかる海外進出。とはいえメリットは多いため、1回だけ試しにどこかでやってみようかと考える中小企業が多いのが実情です。しかし平松さんが強調するのは継続することの重要性。1回だけの海外出展ではほとんど意味がないと言い切ります。それはなぜなのでしょうか、詳しくは次回ご紹介します。