コロナ禍におけるアメリカ国内のモノ不足問題

コロナ禍におけるアメリカ国内のモノ不足

パンデミックがもたらした影響の余波は、様々な分野に広がっています。今回はコロナによるアメリカ国内のモノ不足の問題に触れてみようと思います。同名のポッドキャスト番組もオンエア中です。今回ブログで綴る内容を、より詳しく解説しています。ぜひ聞いてみてください。

①鶏肉

まだそれほど表沙汰にはなっていませんが、アメリカでは今、かなりの鶏肉不足に見舞われているようです。どれほど深刻かというと、食肉加工大手のTyson Foods(タイソンフーズ)が、数十億払って競合他社から鶏肉を買わないといけなかったほど。その要因はどこにあるのでしょうか?

原因は工場の人手不足

最大の原因は、工場の人手不足です。例えば全米の1/5の鶏肉を扱うタイソンフーズは、現在も15-20%の従業員が定期的に工場に働きに来ていない状況。特に子供を持つ母親は、パンデミックで子供がまだ学校や保育所に戻れないため働きに出られないという状態があります。また、昨年と今年の計3回に渡り政府が提供した景気刺激策であるStimulus checks(現金支給)やパンデミック時の特例として通常時より上乗せして支払われている失業保険が、労働者が仕事に戻る意欲を削いでいるという悪循環もあります。

このような状況下で、長距離ドライバーや工場勤務、ファーストフード店勤務など、比較的低賃金の職種において労働者の取り合いが熾烈になってきています。AmazonやWalmartなどパンデミック中に一段と成長した企業が昨今、賃金を大幅に引き上げ人手を確保しているため、その結果多くの中小企業が人手不足に喘ぐという二極化が広がっています。私の知人である食品卸の営業マンも、西海岸からのトラックが人数不足で出せず、物が東海岸に来ないという物流の悪化を嘆いていました。また、2月の天候が悪く気温が低かったため、生産量が落ちたという環境要因もあります。

米国では肉類で鶏肉が一番人気!

このように鶏肉の供給量が逼迫状態な中、ここ数年のアメリカでの鶏肉人気は目を見張るほど。特に2019年にPopeyes(本社はアトランタ。フライドチキンを中心としたファーストフードチェーン)が出したチキンサンドイッチからスタートして、KFC、 Chicken Fil-A、McDonald、Shakeshackなどほとんどのファストフードチェーンがチキン系のメニューを投入しています。
従来のファーストフードの王道であるポテト、ハンバーガーと比べて、時間が経ってもある程度美味しさが残る、ピザのように大人数でシェアができる、などの利点も、人気の秘訣でしょう。
Purdue UniversityのJayson Lusk教授によると、鶏肉は30年前は牛肉や豚肉より圧倒的に人気がなかったが、タイソンフーズなど大手のここ数十年の企業努力により値段が下落したということ、また脂肪が少なく健康的であるという点から、今やアメリカ人にとって一番人気の肉類となったが、このさらに20-30年後には、これと同じことが植物由来の代替肉に起こっても何らおかしくないとのこと。
パンデミックも一つのきっかけとなり、アメリカ国内における鶏肉の需要と供給の溝はさらに広がっていくものと思われます。

②ケチャップ(ミニパック)

ケチャップは、アメリカのレストランのテーブルに置かれている調味料で最も消費される調味料です。パンデミックでテイクアウトが増え、ケチャップの持ち帰り用ミニパックが大量に必要になったのですが、この半年、店内飲食を開始したレストランであっても、感染対策のため(来客、従業員共に可能な限り共有物を減らすことが求められている)、ボトルではなくミニパックを提供する店が増えました。

オークションサイトでまさかの高値

パンデミックの規制が緩んだ現在もミニパック需要は留まるところを知りません。オークションサイトのebayでは、ケチャップ20個が$8で売られていたとか。米小売市場でケチャップのシェア約7割を占めるケチャップ最大手のハインツは、その需要に追い付けず四苦八苦していましたが、もう数週間で供給は回復するとのことです。

③塩素、半導体など…

このほかにも不足しているものは多数あります。例えは塩素(chlorine )。プール・スパ用の消毒薬を生産するBio-Lab社(ルイジアナ州)の工場で昨年起きた大火災の影響により、今後夏に向けて、消毒に必要な塩素が大幅に不足する見込み。代替品と呼べるものはあまりなく、プールを所有する施設の営業や個人宅に大きな影響が及ぶと見られています。
●参考記事→Chlorine shortage leads to price increases for swimming pool owners after factory fire

また、昨年から各所で報道されているため割愛しますが、半導体もその一つ。こちらは自動車、クーラー、PCなどありとあらゆる電子機器全般に深刻な影響が出ることが予想されています。
コロナ禍の米国事情に関しては下記の記事でも解説しています。

米国の「母の日」事情  パンデミックの影響は⁈
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