竹藝家・こじまちからさん編/素材の魅力追求 国内外で別府竹細工の魅力を普及

別府竹細工こじまちからさん

アーティストや企業担当者をRESOBOXスタッフが取材し、思いを語っていただくインタビューシリーズ。2022年の第一回目に登場していただくのは、国指定で大分県唯一の伝統的工芸品「別府竹細工」を国内外で発信する竹藝家・こじまちからさん。大分駅前や商店街に巨大な竹のオブジェを制作したり、別府市で竹細工を体験できるシェアアトリエを運営したりするなど幅広く活躍されています。

Q.別府竹細工の歴史について教えてください
A.良質な竹が起源 室町時代には行商用の籠を制作

歴史は古く、第12代・景行天皇(AD71~130年)が九州熊襲征伐の帰りに別府に立ち寄った際、お供の者が良質な竹が多いと気付き、メゴ(茶碗カゴ)を作ったことが発端と日本書紀に綴られています。
産業として本格的に生産され始めたのは室町時代(1336~1573年)で、当時は行商用の籠を作っていたのだそう。その後、別府温泉が有名になり、湯治客の自炊用の籠やざるが大量に作られるようになりました。それらを持ち帰った人々によって全国に広まったという流れです。
明治時代(1868~1911年)以降は泉都別府に、財界人や文化人が集まる別荘が多く建てられ、工芸品としての需要が高まります。そこで高度で多彩な技術を用いた作品が作られるようになりました。
第二次大戦後、高度経済成長期によるプラスチック製品普及により衰退しましたが、近年では海外から美術品としての注目を浴び、持続可能な自然素材としての期待も高まっています。

別府竹細工
国内外でインテリアや照明器具としての需要も伸びている。籠にキャンドルを灯すと竹から灯りが溢れ、影が美しい柄を創出する

Q.竹の特徴とは
A.工芸品以外にも! 紙や布なども作れるポテンシャルが高い素材 

竹は世界に1200以上の種類があり、日本には約600種類が存在しています。
大分県は、弾力性などに優れた工芸品向けの素材「真竹」の生産日本一を誇る竹工芸の産地で、良質な竹による伝統工芸が受け継がれています。
別府では主に「編組作品」には「真竹」を使用しています。「竹加工品」には、木のように硬くて厚みのある「孟宗竹(もうそうちく)」を用いることもあり適材適所の竹選びをしています。別府の竹工芸の特徴とも言われる竹の編組技術については、伝統的な編組のパターンが200種類を超えるといわれ、多様な模様や造形を作り出せるのが特徴です。
また、サステナブルな素材としても竹のポテンシャルは高く、現代の技術を用いると、成分から化粧品や洗剤、プラスチック、タオル、トイレットペーパーなどを作ることもできます。僕は竹工芸作家として、工芸の技術だけでなく表現を通じた〝素材の特徴・魅力をどこまで引き出せるか〟という課題に挑戦しています。

こじまちからさん演奏
竹で楽器を作り、自ら演奏されるこじまさん。優しい音色が心を解きほぐす

Q.こじまさんが竹工芸を始められたきっかけは?
A.海外で日本のものづくりが称賛 「自分も挑戦したい」と一念発起

約10年ほど前でした。ベースの演奏家として活動する中、公演のためにロンドンで現地のアーティストから「日本のものづくりって凄いよね」という、日本をリスペクトする話題が上がったことがきっかけです。
その時「祖国が生み出すものづくりの中でも、そのルーツを感じられるような伝統的でアナログもの作りに挑戦したい」と思い立ちました。
そこで着目したのが地元大分の伝統工芸「別府竹細工」。当時勤めていた会社を辞め、2年制の大分県立竹工芸訓練センターで学ぶことを決意。幼い頃から音楽やものづくりなどの表現活動が好きだったので、表現するための素材がやっと決まったという感覚でした。

竹細工チーム

Q.卒業後はどのような活動をなさっているのでしょうか?
A.作品や商品作り 地域を盛り上げるPRイベントにも参加

作家として作品を制作したり、講師をしたりしています。自治体や団体からの依頼で商品作りやイベントの催行、空間デザインなども行っています。

例えば2021年2月に、大分空港がアジア初の「宇宙港」に選ばれたことを記念し「竹×宇宙」をテーマに、JR九州大分駅で、最大直径約7メートルの「竹製ドーム」や竹工芸による大型オブジェ約15点による空間演出を企画。コロナ禍のイベントということで手指消毒装置を備えた竹のアマビエも制作展示し、竹と宇宙を結ぶイベントを催行しました。

▶︎当時の様子は動画でご覧いただけます

また、大分市の中心商店街で、地元の竹を切り出すワークショップから、長さ100メートルの竹編み生地を作り出し、高さ約10メートルのクリスマスツリー「うつくしツリー」を設置したこともあります。

螺旋状のツリー
大分の中心商店街での制作。約100mの竹編み生地を螺旋状のツリーに設計

Q.NY、パリ、オランダなど、海外でも発信されていますね
A.竹工芸界に新しい話題を創出 盛り上げたい!

残念ながら「日本の伝統工芸品」は日本人には身近すぎるのか、なかなか響きにくく、海外からの評価と人気による付加価値化によって受け入れられやすくなる傾向があります。海外での出展やコラボレーションに関しては「竹工芸界に新しい話題を創出し、盛り上げていきたい」という思いで取り組んでいます。2021年の年末から22年の年始にかけては、ニューヨークとパリで展示をしました。作品の特徴として、どれも100%竹製ではなく、竹以外の異素材と組み合わせて制作しています。伝統的な竹製品は、竹だけで成立するものが多いですが、今回の展示作品はすべて、レザーや木材、金属、樹脂などの異素材とコラボレーションにしました。
▶︎NY展示の詳しい内容はこちらの記事をご覧ください

ニューヨークでの展示の様子
〈P説〉ニューヨークでの展示の様子

また、2021年から現在進行中のプロジェクトではオランダのデザイナーと共同で、竹を活用したインテリアの制作に取り組んでいます。欧米で暮らすアーティストと現地の人たちの生活や好みにマッチする商品の完成を目指しています。

▶︎YouTubeでプロジェクトの様子をご覧いただけます
竹のカーテン
〈P説〉東京都品川での空間演出ディレクション 竹編みの玉と色の変わる竹のカーテン

Q.別府市に体験もできるアトリエスペース「synergiez」を開業した理由は?
A.竹細工の発信と、自分自身がインスピレーションを得るために

「日本国内で工芸品が売れにくく、業界が衰退への道を歩む現代の日本で、必要とされるものは何か? 自分にできることは?」と考えました。技を極めたベテランの工芸家は多数いるので、若手の自分は工芸家の仕事の幅を広げ、興味を持つ人と作家とを繋げていく活動をしたいと思いました。また、人と交流することが好きなので、様々な技術や知識、異なるモチベーションをもつ人が行き来する場所を作り、そこからインスピレーションを得て「自分も予想していなかったものを作ってみたい」という思いもありました。

そこで2018年に、オープン型のシェアアトリエスペース「synergiez(シナジーズ)」を観光地である別府市、そのなかで観光客にも利便性の高い別府駅裏に拠点を作り開業しました。スペース内には通常のDIY工具や竹工芸関連の機材だけでなく、レーザー加工機や3Dプリンターなどの現代の最新のデジタル加工機械を幅広く常備。伝統工芸に触れたい人や「ものづくり」に挑戦したい誰もが使える場所として、地元の人や、観光客との交流スペース・作業スタジオとして開放しています。

竹の魅力は表現の限界の深さと、素材そのものの美しさでです。竹取物語にも表現されているように、日本人にとって竹は特別な存在で、長年生活をともにしてきた素材です。本来ならもっと多くの日本人が現代でも竹と親しくできるようになるといいと思っています。今後も日本国内にとどまらず、世界の人たちが竹の魅力を感じることができ、楽しめるものを創出していきたいです。

竹工芸では珍しい発想のオブジェ
〈P説〉柔らかい素材との組み合わせで自由に形が変わる竹工芸では珍しい発想のオブジェ

【教えてくれた人】竹藝家・こじまちからさん

こじま・ちから 大分県津久見市出身。大分県立芸術文化短期大学卒。演奏家として活動しながらイベント・アミューズメント施設の運営などを経験する中、地元大分の伝統工芸である竹工芸に魅了され日本唯一の竹工芸専門の教育機関である大分県立竹工芸訓練センターへ。卒業後は、別府市にオープン型のシェアアトリエスペース「synergiez(シナジーズ)」を開業しアーティストとしてグローバルに制作に取り組みながら様々な協業の企画を生み出す。アクセサリーなどの小さな作品から建物内装、公園、駅、神社仏閣などの大型装飾・デザインまで幅広く制作。

こじまさんのNY個展「The Versatility of Bamboo in Artisanal Crafts」記事ページ
「synergiez」HP  ※事前予約で竹細工の体験が可能

【編集後記】
なかなか文章ではお伝えしきれないのですが、とても親しみやすいお人柄で、温かいオーラを纏った方でした。初対面とは思えない雰囲気で安心して会話を進めるこじまさんが言われた「人とのコミュニケーションから新しいアイデアを得る」というお話がしっくりときました。
また、パリでの展示の際には、演奏のお仕事で多忙だった奥様(奥様はバイオリニスト!)の助けとなるべく、1歳のお子さんと二人で20日間の旅をしたイクメンさんでもあります。
30代半ばで、新たな挑戦を始められたことについて伺った時、「いつでも人は変われるし挑戦できる」とにっこり。こじまさんのような方とお話ししていると、自分の可能性を信じて新しいことに挑戦するパワーが湧いてきます。「こじまさんと仕事がしたい」と全国からオファーが絶えない理由を体感した2時間でした。
演奏家出身ということで、ご自身が自ら竹で作った楽器を使っての演奏会も行っているらしいので、別府へ行くときは伺ってみたいと思います。