新潟県立歴史博物館の考古学者・西田泰民さんと、「縄文土器」をテーマに日米繋ぐZoomイベント開催!

縄文土器の魅力

僕の会社RESOBOXでは、「日本文化を世界に広げる」というモットーの下、日本の企業や文化団体などともタッグを組み、ニューヨークで年間50件以上のイベントを開催してきました。

昨年3月のロックダウン以降はオンラインにシフト、1月21日には、日米をZoomで繋ぎ、縄文時代の文化・土器の紹介を行うバーチャルミュージアムツアー「Jomon World」を開催致しました。

専門的な分野のイベントだったため、開催前はどのようなお客さんが来てくださるかな、、、と少し不安に思っていたのですが、蓋を開けると、日本の文化に興味のある方、デザインの分野で活躍する作家さん、美大の学生さんなどが参加。当日の様子は、読売新聞や新潟日報でも紹介されるなど、とても手応えを感じるイベントになりました(詳しくは会社のHPにブログ記事で掲載しています)。

イベントは、火焔(かえん)土器をはじめ、縄文文化を実物大のジオラマで展示する新潟県立歴史博物館との共同開催。考古学者で専門研究員の西田泰民さんに英語でニューヨーカーに対し、米グーグル社の「ストリートビュー」を活用したバーチャル館内ツアーや、「縄文土器の造形的特色」に関する講義を行なって頂きました。

僕自身もワクワクしながらイベントに参加。イベント後、もっと西田さんとお話ししてみたいと思い、この度、僕が出演するポッドキャスト番組でインタビューを敢行。その内容を要約しブログでも紹介しようと思います。(興味のある方は、是非ポッドキャストで全編ご視聴ください)

オンラインイベント「縄文ワールド」。発端はニューヨーカーからのリクエスト

池澤:このたびは、縄文時代、土器など広範囲にわたり1時間以上、深い話をしていただき、ありがとうございました! まずは、新潟県立歴史博物館についてご紹介ください。

西田さん:ちょうど20世紀最後の年である2000年にオープンしました。
当館は新潟の歴史と「米・雪・縄文」がテーマ。中でも「火焔土器」という有名な土器が発見された遺跡がすぐ近くにあったことから、縄文を紹介するエリアは全体の4割を占めています。

池澤:今回、このイベントを開催するに至った背景ですが、ニューヨーク在住のお客様から寄せられた「独特のデザインが素晴らしい火焔土器に興味がある」という声からでした。リクエストに応えようと、僕の会社でリサーチを開始。文献やネット等で調べたり、実際にイベントを開催した時にターゲットとなる人の想定などを行ったりするのですが、その過程でニューヨークのファインアートの名門校である「The Art Students League」の生徒を対象に「縄文土器を知っていますか?」と質問を投げかけてみました。すると、想像した以上の人たちが「火焔土器の存在は知っている」「深く知る機会があれば嬉しい」と回答。これは「イベントにしなくては!」と思い、西田さんにご連絡させていただきました。

西田さん:以前から「当館の展示はストリートビューでご覧いただけます」とアナウンスしていたのですが、このシステムを利用しての展示解説や、海外向けのオンライン解説は初めてでした。実際に開催して、現地でのガイドとほぼ同様の内容を提供でき、直接足を運べない方にも、十分に内容をお伝えできると確信できました。

当館には、海外からも、縄文時代の生活様式や、焼きもの・デザイン全般に興味のある方などさまざまな方が来られます。今後はオンラインを活用しながら、世界中のより多くの方に当館を知っていただけたら嬉しいですね。

世界で注目を浴びる「火焔土器」とは

池澤:今回のオンラインイベントを通して火焔土器といっても、草創期から後期まで、見た目から使われ方まで全く異なるということを知りました。とても一口では語れないとは思うのですが、特徴やユニークなポイントについて教えてください。

西田さん:まず縄文時代とは、日本列島で土器が作られ始めた段階から、稲作が始まるまでの1万年を超える期間を指します。そして、その間に作られた土器を縄文土器と呼びます。その中でも火焔土器が使われたのは、今から五千年前ごろのほんの数百年。
縄文時代初期の土器は、どちらかというと単純なバケツ形やとんがり底のものが大半。主に縄など、表面に何かを転がして模様をつけるスタイルが非常に長い期間、定番でした。
しかし、ちょうど五千年前ごろに、凹凸の目立つ、ダイナミックなスタイルの土器が使われた時代があり、その時に今の新潟県の周辺で作られたものが、現在、私たちが火焔土器と呼んでいるものになります。
他の地域でも立体的な模様を持つ土器が出土されているのですが、火焔土器というネーミングの良さもあったからか、縄文土器の代表のように言われています。
同時代には、それ以前のものと同様にシンプルな土器も作られていたため、当時「少し特別扱いをされた土器だったのでは?」と考えています。

池澤:現在博物館では何点ぐらいの火焔土器が展示されているのでしょうか?

西田さん:実物ではないのですが、100点くらい展示しています。

館内は、火焔土器が使われていた縄文時代中期にあたる五千年前の設定。四季にわたって人々の営みを再現しています。考古学、自然史、民族史の専門家が関わって作り上げたので、専門家が見ても面白いと思ってもらえるはずです。例えば、ジオラマの中に設置していないのですが、動物が活動していた痕跡として「爪痕だけでもつけておこう」など、かなり細かい部分に配慮したりしました。

池澤:世界中にある様々な土器の中でも火焔土器の立ち位置は?

西田さん:一つには、世界最古の土器の一つとして認知されています。
また、ここまで飾り立てているものは珍しいということで、注目を浴びやすいのだと思います。

考古学者・西田泰民さんが縄文土器に魅了された理由とは?

池澤:西田さんのご経歴や専門について教えていただけますか? 実は西田さんが僕の中学、高校の先輩(駒場東邦中・高等学校)だったと、イベント後に知り驚きました。

西田さん:出身は東京ですが、父が転勤族だったため、色々な土地で育ちました。新潟は就職して初めて暮らした土地です。
学生時代から歴史に興味があり、東京大学へ進学。専門を決める時に「考古学」「文化人類学」で悩んだ時期もあったのですが、「出てきたものに何かを語らせる」ことに魅力を感じ、考古学を選びました。最初は、「文明の起源」など壮大なことに惹かれたのですが、研究者は、最初に発掘したことにのめり込む人が結構多くて、私自身は、縄文の遺跡を掘ったところから、ずっとそこに惹かれ、結局進学した当初とは違うテーマで卒論を書き、そのままずっと縄文土器にこだわって色々な研究を続けています。「ものから何かを引き出すこと」に興味があったので、理化学的な分析方法を応用して、土器に染み込んだ化学成分から実際に何を煮炊きしていたのかを分析・復元するなどといったことです。

池澤:実際に縄文時代の方々はどのようなものを煮炊きされていたのでしょうか?

西田さん:今の分析のレベルだと、大まかに「植物性か動物性かを判断する方法」「油を抽出してそれが何に由来するものかを研究する方法」があるのですが、主に魚などの海産物を感度よくキャッチできています。内陸の遺跡から、魚のシグナルが出るのは不思議なことです。

池澤:「出てきたものから何を語らせることができるか」というところに興味を持ち、考古学に取り組まれているというお話が印象的だったのですが、
縄文土器やその周辺の文化が、現代に生きる我々に対して何を語り、何を教えてくれるか。西田さんのご自身の見解で教えていただけませんでしょうか?

西田さん:少し答えがずれるかもしれませんが、私は、親がずっと転勤族だったので、平均すると大体6、7年で住処を変える生活をしていたため、「故郷はどこか」と聞かれると、答えづらいんです。
歴史に関わられる方は、特に自分に絡めて研究したいという方が沢山いらっしゃるのですが、私はそういうところに関心が向かないようなところがあるんです。それよりはむしろ、ほんの些細な手がかりから、過去の人間の物語を引き出すということに凄く興味を惹かれています。

過去の人たちが、自身が持つ能力を最大限に活かして生活していたおかげで生き残り、その命が現代まで繋がっている。過去を研究することは、昔の人の素晴らしさを知ることであり、現代に生きる我々が、その僅かな手がかりから過去を引き出すことができる能力を持っていることを知ることでもあります。そんな人間の凄さを感じ、人間自体を肯定する日々が面白いです。

池澤:西田さんご自身が、今後どのようなことにチャレンジされたいか教えてください。

西田さん:もちろん、今まで知られていなかったことを明らかにする挑戦は、研究者としての醍醐味でもありますので、現在もいくつかのテーマに取り組んでいます。しかし、今後は次世代の研究者のために「こういうことをすれば、こういうことが分かる」といった方法論を残し、未来に貢献できたらと考えています。

池澤:海外の方々との触れ合いは、近年増えていたりするのでしょうか?

西田さん:イギリスの企業が外国人を対象に、「A Land of Contrasts」と呼ばれる、青森の三内丸山遺跡からスタートし、秋田の大湯環状列石や新潟の火焔土器を見て、その後、長野、大阪、京都、姫路を巡り、佐賀の吉野ヶ里遺跡まで全国を辿る16日間のツアーを7、8年連続で企画・実施しています。これは日本のいわゆる”観光地”に訪れるというより、歴史的なバックグラウンドを学ぶ旅行であり、現在縄文遺跡が世界遺産登録を目指しているということもあり、より多くの方に日本の考古学に興味を持って頂いているということの現れでもあるかと思っています。また、海外の学会に参加する際も、以前よりも知識を持って聞いてくれてる人が増えたように感じています。

また、海外の学会に参加する際も、以前よりも知識を持って聞いてくれてる人が増えたように感じています。

池澤:今回のイベントではNY在住の陶芸家が、五千年も前にこんなにもユニークな土器があったことに対して非常に興味を持ち、「デザインについての時代的な背景やルーツを知れたら、自身の作品作りに生かしたい」と言っていました。さまざまな角度から縄文土器を発信することで、新しい何かが生まれるのでは?と感じた瞬間でした。

我々も、今後何かお手伝いができることがあれば是非一緒に取り組んでいけたらと考えています!

新潟県立歴史博物館HP