海外で挑戦するアーティストに経験談やアドバイスを語っていただく「海外挑戦者インタビュー」。12回目は東京芸大デザイン科4年の岩城花歩さんです。ファッション分野を中心に学ぶ彼女は、海外でアイデアを得ようと文部科学省の留学生支援制度「トビタテ!留学JAPAN」に応募し、審査を通過。大学を1年間休学し、NYでインターンとして3カ月間働きながら、2020年1月、自身のブランド「Kaho Iwaki」を立ち上げ、NYでの展覧会を実現させました。
Q1・服を作りはじめたきっかけと、作品のコンセプトを教えてください
A・おしゃれな大人になりたい! 特定の誰かに向けた服をデザイン
「服や髪型など、自由に楽しめるおしゃれな大人になりたい」との思いから、アートやファッション系の仕事に就くために東京芸大のデザイン科に入学しました。2年まではプロダクトや映像など、デザイン全般を学び、3年からは服を中心としたファッションでの表現に注力しています。
作品のコンセプトは「どうしても着てもらいたい特定の人がいる服」です。見た目を重視したアート作品としてではなく、使い手に満足してもらえるデザインを心掛けています。制作する時は、「自己満足の作品になっていないか」を、何度も確認しています。
Q2・どんなテーマの服がありますか
A・「和服」など 4テーマ
現在、主に4つのテーマで展開中です。一番最初に手がけたのは「和服」。着物の襟や裾の形を生かしつつ、素材や全体の雰囲気を現代の生活に馴染むようにアレンジしました。着物に馴染みのない人が気軽に着用できます。発想の源は、2018年のヨーロッパ旅行。ロンドンやパリ、ミラノのデパートで現地らしい服を探したのですが、どこもトレンド重視の似た服ばかりで、「これなら東京で買えるのでは…」と、期待を裏切られたように感じました。帰国後、「東京五輪で訪れる海外のファッション好きに同じ思いをさせたくない」と、制作をスタートしました。
2つ目は、半身が動きづらい祖父から着想を得た、障害が負い目にならない「上がらない右手のための気分が上がる服」です。マイナス面をあえてポジティブに捉え、右の袖部分を思いきり装飾したり、腕を上げなくても着られる工夫を施しています。3つ目は誰かと一緒に着る「対話する服」。これは日常生活で着用するものではなく、コミュニケーションを取るためのツールです。最後は、NYの展示会で披露した「境界線」です。
Q3・NY展示「境界を超えるー着物ジャケット展」の作品とは?
A・着物×ニューヨーカー 文化や人種の差を曖昧に
今回の「境界を超えるー着物ジャケット展」は文化や人種の「境界線」がテーマで、最初に制作した「和服」のアレンジ版です。具体的には、日本の着物の形とニューヨーカーの上着(素材や柄)を組み合わせた「着物ジャケット」を7点制作しました。デザインは街ゆくニューヨーカーをスケッチして研究し、ダウンやボアジャケットの素材、チェック柄の生地を、着物の形に落とし込み、文化や人種の境界線をあやふやにした作品に仕上げました。
展示はフォトグラファーの女性に協力してもらい、「服」と「写真」の2部構成で展開。写真は、街中でさまざまな人種の人に着てもらい、スナップ写真50点を撮影し、展示しました。撮影はとても面白く、オシャレな人を街中で見つけては「あなたとても素敵だね!」と、褒めまくっては協力を依頼(笑)。みなさんポーズが上手だったり、着こなしがかっこよくて「流石はNY!表現することが好きな人が多い!」と感激しました。
<編集後記>
「Kaho Iwaki」は斬新なアイデアに加え、「着てみたい!」と思えるとても素敵なデザインが魅力です。素材選びから縫製まで、彼女のこだわりが詰まった一着は帰国後に開設予定のHPで披露予定。2020年夏頃にこちらのサイトで紹介いたします。インタビューの後編ではインターンとしての活動や今後の目標について聞かせてもらいました。お楽しみに!
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●「株式会社RESOBOX」はニューヨークを拠点に、世界に向けて日本文化を発信しております。また、幅広い企業を対象にした海外進出支援サービスを展開しております。問い合わせなど、詳しくはHPをご覧ください