海外で挑戦する方々をRESOBOXスタッフがインタビューし、経験談やアドバイスを語っていただく「海外挑戦者インタビュー」シリーズ。第七回目は、東京藝術大ハープ科を卒業後、ハープや箜篌(くご)の演奏家・研究者として、ニューヨークを拠点に世界で活躍する菅原朋子さんにお話を伺いました。
Q1・現在の活動内容を教えてください
A・米国ニューヨークを拠点に演奏、研究、指導
ニューヨークに拠点を構え、世界各地で演奏、指導、研究などを行っています。
演奏者としては、ソロをはじめ、オーケストラや室内アンサンブルのメンバーとして25年以上のキャリアがあります。研究者としては、古代ハープの調査や製作、歴史の究明に携わっています。また、指導者としてはさまざまなシーンでレッスンをしたり、歴史や研究成果などをお伝えしたりしています。
Q2・ハープは種類が多いですが、どのタイプを演奏されるのですか?
A・アジアや欧州の古ハープ
ご存知の方はまだ少ないかもしれませんが、日本にも奈良時代に伝来した「箜篌(くご)」というハープがありました。私が主に演奏しているのは、この箜篌を含む古ハープです。欧州の「ゴシックハープ」「ケルトハープ」「バロック・トリプルハープ」も弾きます。
Q3・箜篌の起源や歴史を教えてください
A・約3900年前 古代メソポタミア
箜篌の起源は、紀元前1900年。古代メソポタミアで誕生した学術名・角形ハープという古代の弦楽器です。シルクロードを渡り、日本を含むアジアやスペインなど広い地域で、長い年月弾かれ続けていました。しかし、今から1000年程前に東アジアからなくなり、300年前に中近東から消え、歴史上から完全に消滅したといわれています。
日本へは、奈良時代に伝わったといわれており、正倉院に宝物として断片が収められています。完全な状態で残っている箜篌は存在しないため、演奏者は正倉院に残されたものを手掛かりに楽器を復元し、演奏しています。
呼び名も土地によって異なり、日本を含む東アジアでは「箜篌」ですが、中近東では「チャング」、ギリシャでは「トレゴノン」と呼ばれています。
Q4・演奏方法はどのように再現しているのですか?
A・想像力と感性がポイント
箜篌の歴史は長く、しかも300年前に一度途絶えてしまったため、知る術は残された図像や古文書しかないことが現状です。結局のところ、演奏者が想像を膨らませ、感性で演奏することがほとんどです。
私は歴史を紐解くうちに、さまざまな種類のハープと出合いました。その度、歴史や音色に魅了され、演奏もするように…。例えば、メトロポリタン美術館(ニューヨーク市)で、13世紀のスペインの書籍に、ハープとともに箜篌が描かれた絵と出合ったことをきっかけに箜篌で13世紀スペインの音楽を始め、そのうちヨーロッパの古ハープも演奏し始めましたし、さらに、同じく欧州に伝わる「バロック・トリプルハープ」に惹かれ、こちらも弾くようになりました。複雑な楽器なのですが、大変美しいのですよ。今はバロック時代の作曲家ヘンデルが、バロック・トリプルハープのために書いたといわれる楽曲を演奏しています。
また、最近は、ヨーロッパ古楽に必要なダンスの感覚をつかもうと社交ダンスの一種である「イングリッシュ・カントリーダンス」も音楽とともに楽しんでいます。こちらは欧州で生まれた「ケルトハープ」での演奏。このように、知れば知るほど魅了され、挑戦する日々を送っております。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<編集後記>
好奇心の趣くままにさまざまな種類のハープを演奏されている菅原さん。お話を伺っているだけで、古代の世界に導かれ、時空を旅しているような気持ちになってきます。記事では紹介しきれなかったのですが、シルクロードのオアシス都市として栄えた中国・敦煌にある仏教芸術の聖地「莫高窟」でも、20世紀初頭に古代の楽譜が発見されたのだとか…。歴史を遡りながら研究し、想像を膨らませて演奏される音楽…。聴いていると心が解きほぐされます。菅原さんの最新の情報や演奏の動画などは下記からご覧いただけます。記事の後編はこちら→
●菅原朋子さんのサイト
htts://www.kugoharp.com/
●Eurasia Consortのサイト
https://www.eurasiaconsort.com
●「株式会社RESOBOX」は、日本文化と多文化が響き合い、新たな文化を創出するスペースをNY市内で展開しております。日本文化を核にしたパフォーマンスをアメリカで披露したいとお考えの方はご相談ください。また、上記のような文化事業に加え、海外進出支援サービスも行っております。マーケティングリサーチやイベント出店、米国に合わせた商品開発に関する相談はもちろん、NY在住のアーティストとのコラボレーション企画などもご提案できます。興味がある方はHPをご覧ください→ https://resocreate.com 。問い合わせはhttps://resocreate.com/contact/まで、気軽にお寄せください。