米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催・中編

海外のバイヤーの特徴

前回の投稿、「米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催・前編」に続き、僕がNYで12月・1月に主催した、ニューヨークのバイヤーと日本の食品・酒・焼酎メーカーを繋いだオンライン商談会について、ここ2カ月で集中的に行った50件以上の経験から、

日本のメーカーが、海外のバイヤーに自社商品をPRする際、
「事前に準備すべきこと」「見落としがちな心構え」
などについてまとめましたので、海外進出したい方は是非参考にして頂けたらと思います!

上記の内容に加え、ポッドキャストでは商談会当日の米国ならではの面白いエピソードや、困った時の解消方法などもお話ししていますのでぜひ聞いてみてください。

英文の資料は数ヶ月前の完成を目処に準備

今回、僕が担当している商談会は、ニューヨーク市場への参入を目指す日本のメーカーさん約20社と、NYのバイヤー8社を繋ぐというもの。

海外向けに多言語の資料を揃えているメーカーさんもおられますが、英文での資料は作ったことがないというメーカーさんもおられました。

ただ、海外進出を目指したり、オンライン商談会への参加を希望されるのであれば、商談会のセッティングや準備期間などの初期段階から英文での資料が必要です。これまでの大規模展示会など、「会場」を使った商談会の場合は、当日までに作ればよかったと思いますが、オンライン商談会は、事前に現地のバイヤーさんに渡す必要があるため、3〜4カ月前には必要です。

資料の中身に注目 バイヤーが注視するのは?

重要となる資料の中身ですが、多くのメーカーさんは、「商品の原材料」などの細かい情報をエクセルの表にまとめて添付されていることが多いのですが、人気のバイヤーは何十社分もの資料に目を通す必要があるため、残念ながら全ては見ていない、または見切れていないケースがほとんど。

ですので、要点をグッとまとめた資料も別途必要です。理想は「忙しい方はこれだけ見れば大丈夫!」と言って渡せる、よりポイントを押さえた1枚の資料です。

今回の商談会の場合は、中間に入った僕が全ての資料の内容を把握した上で「この部分がポイントだから見ておいてね」と、直接バイヤーに伝えたのですが、バイヤーの立場になって考えても、ドーンと何十社分もの分厚いプレゼン資料を渡されたら、全て目を通すのは無理な場合も多いかと思います。

米国人向けの商談会で押さえるべき六つのポイント

では、実際に資料を作る際にはどうしたら良いのか、また、商談会で心掛けることは何なのか、具体的に六つのポイントを紹介します。

①まずは商品の紹介を プレゼンの順序


まず最初に気にして頂きたいのがプレゼンの「順序」です。

日本企業さんが作成した資料でありがちなパターンが、最初に自社の説明(場合によってはご自身の紹介)をして、商品説明に入るケース。しかし、一発目に商品説明から入りましょう。「今回の商談会では、この商品について語ります」と断言してから始まり、最後に「我々の企業はこういうところです」と、締めるという流れです。

要は、バイヤーが一番知りたい情報を最初に持ってきて興味を引き、限られた時間の中で可能な限り商品のPRをしましょうということです。会社の説明は商品価値に繋がるポイントを厳選して述べましょう(xxで日本一の産地であるとか、創業150年の老舗であるとかなど)

②既存商品との比較と、それに基づく分析結果


次に「米国で既に販売されている既存競合商品との比較」があると選ばれやすいです。

商品説明に際して、自分たちこだわりポイントや特徴について語るより、アメリカに現在ある商品と比較し、いかに勝っているかという強みを入れると良いと思います。

既存の米国産商品「●●」と比べて、うちの商品は栄養価が■倍高い、サイズが▲㌢大きい、質感がこう違う…みたいな話です。こちらのバイヤーさんは、現状それらの競合商品を仕入れている訳ですから、比べた結果で自社にメリットがあれば変えようと思われるはずです。

こういった比較を入れるためには、事前に現地でのリサーチが必要。購入するなりして分析し、その結果をきちんとした資料にまとめ、商談会で訴えましょう。

実際に、これまで担当した商談会でもシェフやスーパーのバイヤーさんが「この商品は米国で流通している商品Aと似てるけど、どう違うの?」といった指摘をされていました。

そんな時に「うちの商品はAよりここが勝っているので、こういった面でクオリティが高い」など、自社の優位性をすぐに語れると良いですよね。分析に基づいた情報はバイヤーさんの心をグッと掴むことができます。

③ゴールを明確に設定

今回の商談会で何を獲得したいのか。明確な目標を定めておきましょう。
小売店に売り込みたいのか、それとも卸しなのか、またはレストランなどの業務用なのか…。これらを明確にしていないとプレゼンの方法がぶれてしまいます。

例えば、相手がリテールのバイヤーならば、レーベルやサイズ、オーガニックなどの認証が重要になってきます。しかし、レストランなどの業務用の場合は、パッケージの表面のデザインはそこまで関係はないわけです。シェフに「こんな伝統の柄を配したおしゃれな袋に入っていますよ」と訴えても、彼が知りたいのは「味や質」の話。

あれもこれもと欲張ると、結局のところプレゼンの内容が中途半端になり、誰にも響かない内容になってしまいます。

④失敗は禁物! Zoomは社内で練習しておきましょう


すごく当たり前なことですが、Zoomはある程度練習しておいた方がいいです。これも実際にあったことですが、資料をアップできなかったため、キャンセルになったケースがあります。

真剣な話、本番は1分も無駄にしてはいけません。始まりました→挨拶します→資料表示します→説明します…といった一連の流れを、数名で分業るなどチームで連携し、ポンポンポーン!進めましょう。
オンライン商談会に挑戦しようと思われる方は、社内でアカウントを二つ作って何度か練習してみて頂ければと思います。

⑤姿勢

同じ商品であっても、日本とアメリカでの販売は全く違います。
「それはそうだよね…」と軽く思った方、その想像を遥かに超えるレベルで違います。

この違いを日本のメーカーさんにも実感してほしいという思いも込め、今回の商談会には、かなりストレートに意見するバイヤーさんにも参加してもらいました。ニューヨークの有名スーパーの方なのですが、「ダメなものは駄目」「この商品はこういう理由で売れない」と、メーカーさんに対して ズバズバとおっしゃる、、、通訳の方も言葉選びが大変。

もちろん意地悪をしたいわけではく、「こんなにも日本的な感覚で米国に商品を持ってきても通用しないよ」と言ってくれているだけなんですよね。今回の場合だと、「商品への思いやこだわりなど、感情的な形容詞はどうしても米国で通用しにくい」。その代わりに「何の栄養素がどのくらい含まれているのかなど、数値化されたデータが強みになる」などの意見が皆さんに響いたようでした。

また、同じアメリカでもNYは特に特殊。さまざまな人種が混在し、多様なマーケットが存在します。ターゲットをアジア系にするか、白人系にするかというだけでも、「アジア系を狙うならパッケージはこうだよね」「白人系ならばキャッチコピーを全部変えなきゃいけないね」といった感じで、売り方が大きく変わります。本来ならば人種やマーケットに合わせて、「中身は一緒だが、全然違うパッケージ」にみたいなことも、あるべきなんです。

また、以前体験した印象的なケースが、キャンディの売り方。NYだと袋から出して計り売りで売ることも多いため「パッケージから出して売りたい」と、バイヤーさんから言われて、メーカーさんが困ってしまったことも。

もちろん「時間をかけて一生懸命作ったパッケージで米国進出したい」という気持ちも分かります。ただ、「これがこの商品のアメリカの売り方なんだ」と割り切り、新しいスタイルの売り方に挑戦する姿勢も大切です。もちろんそれぞれの会社が持つポリシーや伝統も大事ですので、最後はメーカーさんに決断を委ねます。

一概に「全てアメリカスタイルに合わせること」だけが正解ではないし、それぞれの良さがあるからです。我々のような立場の人間がすべきことは、これまで米国市場で培ってきた経験を生かし「ここが譲れないなら、こういう方法もある」といった様々なオプションを提案することだと考えています。ですので、様々な可能性を考えつつ、頭をぐるぐるとフル回転で回しながら日々商談会には挑んでいます。

⑥笑顔

最後に一つ言わせてもらうならば、日本の皆さんに、笑顔が足りない(笑)
こんなコメントをすると、「何言ってんのこいつ」って思われるかもしれませんが、緊張されているからか、または慣れないオンラインという環境のせいか、、米国サイドのバイヤーに比べ、圧倒的に表情がないのは惜しいポイントですね。

基本的にアメリカという国は、笑顔を作るカルチャーを持った国なので、豊かな表情はビジネスシーンで有利に働きます。特にオンライン商談会の場合、環境がフラットなため、人間同士のコミュニケーションに影響を与える要素がかなり限定されてしまいます。

例えば有名シェフのいるゴージャスなレストランで商談会をすると、店内の雰囲気やスタッフの衣装などに圧倒されながら話が進んでいくのですが、Zoomなどのオンライン会議では、すごい有名シェフも、自宅のシンプルな壁を背景に、Tシャツで出てきたりします。情報の要素が減る分、声のトーンや表情などの印象が強くなるので、無表情か笑顔かは大きなポイントになるわけです。

結局のところ「この人と仕事をしたい」って思われないと商談は進まないもの。ご自身のキャラクターも出しながらPRしてもらえたらと思います。

また、コロナ禍ならではのトピックなのですが、マスクを外せる環境で商談会に参加することをお勧めします。日本人は、マスクをしていても「目」で表情を読めるところがあるのですが、欧米社会は「口」の動きで表情を読む文化です。

その口をマスクで閉じてしまうと、「この人何考えてるのかな」「何か隠してる?」「自信がないのでは」など、捉えられることもあり、もったいない印象を受けます。ですので、部屋を分けるなど、出来る限りの工夫をし、マスクなしで取り組みましょう。

以上、六つのポイントについてお話させて頂きました。
実際に、僕が仕事をする際にはこの何倍も色んなアドバイスをして、クライアントさんにはガチガチに準備してもらうのですが、今回はざっくりと概要の紹介でした。

さらに、数日後にアップする「米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催・後編」では、商談会での出会いをきっかけに、どのように米国市場へ自社製品を広げるのか…。商談会にも参加していただいたNYのトップシェフの例を交えながらお伝します。

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