米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催・前編

オンライン商談会のメリット

弊社が2020年12月から21年1月に主催した、ニューヨークのバイヤーと日本の食品・酒・焼酎メーカーを繋いだ約50回のオンライン商談会について、「開催に至るまでのプロセス」「オフラインにはないオンライン商談会の特徴」などについてまとめましたので、海外進出したい方は是非参考にして頂けたらと思います。

同プロジェクトは日本のある自治体から依頼を受けて実施。ニューヨークに進出したい日本の食品・酒メーカー約20社と現地のバイヤー8名をオンラインで繋ぎ、同メーカーの商品を米国市場に売り込むというものです。NYの小売店への商品の実営業販売やプロモーションイベントの開催なども弊社は日々行なっていますが、今回は同商談会のオーガナイズが主な業務となります。

ざっくりとした全体のプロセスは、まず参加企業の商品について把握し、それぞれの商品に合った米国のバイヤーを探し、各企業と個別の勉強会を実施し米国向けプレゼン方法をアドバイスした上、商談会スケジュールを設定。全ての商談会に同席し商談成立をサポートするという流れになります。

「長期間、同じ商品と向き合っていて疲れたり飽きたりしないですか?」と聞かれることもあるのですが、全くそんなことはなく、

「アメリカ人バイヤーは日本の食材に対して余計な固定観念なく接してくるので参考になる」
「ミシュラン星付きシェフがこの豆腐を扱うとこんなアレンジを考案できるのか」

と、長年この業界にいてもまだまだ日々目から鱗が落ちる発見で溢れていて、プロジェクトが進めば進むほどどんどん面白味が増してくるものです。クライアントである日本の企業の皆さんとも、NYのバイヤーさんたちともこの二カ月で随分と親しくなりました。

この「オンライン商談会」の特徴について、ポッドキャストではより具体的に語っていますので是非ご視聴ください。

NYCの非日系バイヤーを選出し、アプローチ

商談会の仕事でまず苦労するのがバイヤー探しです。まずは、日本側の参加メーカーのリストを自治体から受け取り、商品の内容をしっかりと把握した上で、互いがwin-winな関係を築ける可能性があるニューヨークのバイヤー候補をリストアップします。

今回は各商品の米国での新たな商流を作るべく、非日系企業のみを集めました。日本の商材は過去にほとんど扱ったことがないという先も存在しますが、だからこそ新しい世界を開くという点で意味があります。

実際には各バイヤーに接触する際に参加商品のリストを見せながら営業をしていくのですが、もちろん困難は承知の上。特に日本の商品の専門ではないバイヤーの場合、保守的になるのも当然であり、そこにコロナ禍の影響もあり、「今は新商品の開拓には興味はない」と断られるケースも多数。

しかし、ここからが営業の醍醐味であり、本当の勝負。

「この商品を仕入れることで、新規ターゲットにリーチできる」
「レストランのメニューに、このような新たな変化が加えられる」

とアイデアをどんどん出して口説き、これまでにNYCで事業展開して培った人脈も活用。
結果的に富裕層向けスーパーの仕入れ責任者、中華系大手卸の社長、リカーショップのオーナー、有名バーテンダー、ミシュラン星を持つシェフら、米国で開催される大規模な展示会に出店してもなかなか会えない厳選の8名に参加して頂けることになりました。

日本の各メーカーとの「勉強会」

弊社としては、携わった全ての企業の商品をNYに広げたいという思いで仕事を引き受けているので、事前の勉強会は、全メーカーと一対一でじっくり行いました。

今回は「海外のバイヤーさんと、オンラインで商談会するのは初めて」というメーカーさんががほとんどでしたので、事前にオンライン説明会を実施すると共に(※こちらの記事に一部ですが内容をまとめております)、zoomを通し一社ごと30分程度、実際にご用意いただいたプレゼン資料に対して、我々の方で気付いた部分には修正やアイデアをお伝えしたり、通訳を担当するスタッフも同席して表現方法や文法的など細かい指摘もさせて頂くことに。この「勉強会」あってこそ、本番の商談会をスムーズに進められたと言っても過言ではありません。

オンライン商談会の特徴ー

今回のプロジェクトもそうなのですが、このコロナ禍においてオンライン商談会は今後主流になっていくと思われます。そこで、一部にはなりますが「良いところ」「悪いところ」を以下簡単にまとめてみたので、参考にして頂けたらと思います。


【良いところ】

①時間
通常の会場で行う商談会では、バイヤーがブースに行き「何か違うな」と感じたら、ものの1分で立ち去ってしまうため、会話の中から生まれるかもしれない可能性などに気付くことなく終了することが多いです。

しかし、オンライン商談会の場合、まず事前に興味のある商品をバイヤーに選んでもらって”マッチング”しているということ、かつ30〜40分の拘束時間があるため(一対一のオンライン商談会の途中で抜けたりはしない)、プレゼンの最中にバイヤーの反応を見ながら興味を持ってもらえそうな方向に持っていくことや、「この方と気が合いそう、一緒に仕事をしてみたいなど」、人間関係の構築を行うことで商談成立の確率を上げていくことができます。

またバイヤー側には僕の方から事前にお願いし、実際にサンプルを調理をしてから商談会に臨んでくれているので、お互いにとって充実した時間になったと、確信しています。有名シェフに簡易なものとはいえ自社商品でレシピを作ってもらえる機会はなかなかないので、メーカーさんはみなさんかなり喜んでくれますし、何より、バイヤー・メーカー両者がよりその過程を通してお互いに親近感を持つようになります。

②サンプル一つ一つへのフィードバックが丁寧
大きな会場での商談会の場合、開催日が限られているため、数時間で会場内のさまざまな食べ物を試食しなくてはいけないケースが多々あります。例えば一つ目のブースでお酒を試飲→その後すぐに別のブースで辛い食べ物を試食→和菓子を食べ…など、次々と食べることで、どんなバイヤーでも味覚が落ち着かずなかなか各商品への評価が難しくなります。

その点、オンラインの場合は商談会の数週間前に(僕の場合は)自らサンプルを渡しに行き説明をするので、バイヤーも「今日はA商品を食べて明日はB商品を食べて…」と、余裕を持って味わってもらうことができ、かつパッケージを端から端まで見たり、サンプルを自らのアイディアで調理してみたりすることで、商談会前にしっかり考える時間を持つことができ、より深い質問が準備できるようになります。

これは会場で行われる商談会のように、バイヤー自身は自分の手を動かさず、メーカー側が提供する調理方法で味付けされた商品を食べるのとは(もちろんそれも重要ではありますが)商品に対する味方・理解度が全く変わってくるので、的確な判断が可能となり、その分、商談会当日のメーカーさんへのフィードバックも丁寧になります。もちろん商談成立が目標ですが、できなかった場合も、今後の商品開発などに活かしていただけます。

③コスト
日本から渡航費や滞在費に何十万円もかけて、米国まで来る必要がないところ。また、会場費用をレンタルするコストもいらないと、金銭面でのメリットは大きいです。例えば会場でブースを作っても、訪れたバイヤーが口に入れた瞬間、話も聞かずに立ち去るというケースも多くあります。商談会当日にバイヤーが突然来ることができなくなり結局自分が滞在している期間に会えない、なんてことも心配しなくて済みます。

もちろん、オンラインが全て優れているわけでは決してなく、対面には対面の良さがあることは言うまでもありません。

【悪いところ】

①スケジューリング
日本とニューヨークとの時差が14時間あるため、予定を合わせるのが本当に大変です。

バイヤー、メーカー、通訳、そして僕自身。時差を加味しながら4人の日程を折角合わせても、突然一人の都合が悪くなり当日キャンセルになったりすると全て振り出しに戻ります。。

僕自身の日常は、基本的に朝4時くらいまで仕事して、4時間程度の睡眠をとり、8時くらいに起床して市場行って買い出しを行い、11時のレストランオープン時間に間に合わせ、店頭でサーバーをやりながら隙間に業界紙やニュースなどから情報収集、それを基にイベント企画、自社店舗を閉じた後に小売店営業、社長業(マネージメント – スタッフの人生相談を含む・笑)…という日常を送っているのですが、

最近は日本のメーカーさんからの様々な質問に対応するため、朝6-7時くらいまでかかることもよくあります。こんな生活を10年続けていて慣れているので全く平気なのですが、メーカーさんや自治体の方の中には、僕が日本にいると思っている方がいらっしゃるようなので、そこは否定しておかないといけませんね!僕は年間の95%以上は米国におり、特に今年はコロナの影響もあり、2年ほど日本には戻っておりません。。。早く日本に行ってお客さんの工場・工房見学をしたい。。

やはり、対面で会い五感を使うことで得られるライブ感、安心感、信頼感を全てオンラインで満たすことは絶対にできませんね。

②サンプルをベストな状態で渡せない可能性も?           

 現地のバイヤーに馴染みのない商材を食べてもらうケースの場合、注意が必要です。「解凍する方法」「茹でる時間」「焼き加減」など、本当にベストな状態で味わってもらえているかという不安があります。うちのような中間に立つ人間がいる場合、直接しっかりと説明するなど可能な限りは対応するのですが、文化の違いなどもありなかなか難しいポイントではあります。

さらに、一旦取引が始まり現地のお店に商品が並ぶと、その「メーカーさん側が考えるベストな状態」で必ずしもアメリカの一般消費者にお届けできるわけではないこともあり、かつその状態が現地の方にとって満足するものかどうかさえ定かではないということなども総合的に考え、どこに妥協点や改善点(パッケージングやQRコードによる更なる商品説明など)を入れ込むかということも含め思案していく必要があります。

次回、「米国バイヤーへ日本産品を売り込む!「オンライン商談会」を主催しました・中編」では、商談会に向けての事前準備など本編の続きを語りますので、ぜひ読んで(聞いて)頂けたら嬉しいです!

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