米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催・後編

米国のシェフに商談会でPR

オンライン開催の メリット&デメリットを書いた前編「準備すべきこと」や「心構え」を解説した中編に続き、本編でも「オンライン商談会」についてお伝えします。メインテーマは「商談先がNYのシェフ」の場合の一例。ポッドキャスト番組ではより詳しく語っていますので合わせてご視聴ください。

商談会においてシェフが考えてること」について、一般的に日本のメーカーさんがお持ちの視点に「少し違うな」と最近気づいた点がありましたのでご紹介します。これはあくまで商談先がシェフであった場合とですので、商談会としての全体論ではありませが、参考になればと思います。

突然ですが、商談会の参加者の中にシェフがいた場合、何を期待しますか? 

「この方のレストランに仕入れてもらおう!」と思った方、結論から言うと、その考え方はベストとは言えません。

これだけ文化が違う両国。日米を繋ぐ商談会では、考え方や市場の違いが生むちょっとした思い込みが、可能性を狭めているケースがあります。日々NYで世界中からこの街に集ってくる様々なジャンルの方々と仕事をしていると色々なことが見えてきます。

商談会の目的は、「商談先が自分の商品を買ってくれるか買ってくれないか。それ以外に何かあるの?」と思いがちですが、

スーパーのバイヤー、リカーショップのオーナー、卸業者、シェフ…など職種だけでなく、個々人が異なる目的で参加されているという認識をまず持っておく必要があります。

冒頭でも書いたように、シェフを例に上げた場合、商談会でマッチングしたら

「このシェフが経営するレストランのメニューに、自社の商品を採用してもらえる」と思われる方がほとんどですが、実際のところそのように進んだ例はほとんどありません。
この点を間違えて商談会に臨むと、自分も相手も全く噛み合わず無駄な時間となってしまうので注意が必要です。


シェフが商談会に参加する目的とは?

今回弊社が主催した商談会にも参加して頂いたのですが、NYで活躍するトップレベルのシェフになればなるほど、レストラン経営はもちろん、それ以外のプロジェクトも同時に展開されているのが一般的。

例えばテレビの出演、料理番組のプロデユース、レシピ本の執筆、他社のレストランのメニュー開発、超富裕層のお抱えプライベートシェフ…などなど。とにかく、食に関わるあらゆる事業をされています。

物価・地価の高さでは世界でも有数のここニューヨーク。自分の名前を冠したレストランのトップシェフでありながら経営者でもあるという方も多く、莫大な初期投資に加え、家賃や人件費など多額のランニングコストを賄っていくのは、例え有名店であってもなかなか辛かったりするものです。


ですので、NYに拠点を置く意味は企業ごとに様々ではありますが、特に飲食店に関しては、「実績作りとして一時的に取り組むプロジェクト」と捉えて、5〜10年経営し、市場で一定の評価を得たところでさっと閉じようと開店時から計画しているシェフもいらっしゃいますし、そのようなトップシェフの背後にいる投資家達の中にはその考えを理解した上で出資している方もいるようです。

実は店舗の採算はトントン、もしかしたら赤字だけれども、

「ニューヨーカーが認めた繁盛店を経営している(た)」

という実績が、そのシェフの実力を表すポートフォリオの一部となり、前述のような様々な食に関わる仕事の依頼へと繋がっていうことですね。

「(今は閉じたけど)過去にNYで20個のミシュラン星を獲得した店を経営していた」

これほど説得力があるセリフはありません。

むしろそれさえあれば、ウェブもSNSも名刺でさえも要らないわけです。

もちろん、「自分が一番やりたいことはレストランにおいて日々目の前のお客様に自分の創った食を届けることである」、というシェフも多くいらっしゃいますので誤解なきよう。
ただ上記のような考え方も一般的ですよ、ということです。


広告塔としての活躍に期待! 

ですので、シェフの中には、その商品を自分のレストランに入れるというよりは、自分が関わっている他の様々なプロジェクトで活用したり、インフルエンサーやアンバサダー、すなわち広告塔となって販売量を増やしていく役割を担と考えています。

また、「ニューヨーカーの舌を満足させる方法を知っている」のが強みですので、その商品が現地消費者のニーズとは合っていない時などは、商品開発の時点から参画することでより売れる商品に改善をしていったり、同商品を使ったレシピを作り自らが出演してオンライン配信することで付加価値を付けたり、時に自分がアドバイザーとして協力している他のレストランのメニューに使うことでテストマーケティングの機会を創出したり…そのような業務を前提として契約を結びたいと思っている方も多いですね。

「xxxレストランで使われている」味ではなく、「xxxシェフが認めた」味

もちろん「自分のレストランのメニューで使ったみたいので仕入れたい」というシェフもおられますし、今回の商談会でも実際にその方向で進みそうな案件もあります。

しかし、そのシェフが働くレストランに仕入れてもらった場合、メーカーさん側から考えると、「一つのレストランに仕入れてもらった」ということでだけで終わってしまい、ビジネスとしては将来に渡ってあまりボリューム感が出ません。いかに有名なレストランであっても、1店舗だけだとどうしても消費量が限られるからです。

「いや、ニューヨークの有名店で使用されているという強い宣伝材料になるじゃないか」と思われた方も多いと思いますし、それは決して間違いではありません。これは商材次第で全く状況は異なるということはお断りさせて頂いた上でのお話ですが、

そのシェフからすると、自分のレストランで使い始めた場合、公に「このメーカーのこの商品を使ってます」と紹介しづらくなってしまうというのが本音。有名レストランであればあるほど、自分のレストランのユニークさ、隠し味を披露したくないので、同レストラン主導で他のレストランに発信してもらう広告塔としての役割はあまり期待できず、そのレストランでの仕入れ以外には広がり辛くなってしまう可能性が正直ある訳です。

プロモーターやアドバイザー契約が得策

それならば、前述の通り、そのシェフにプロモーターやアドバイザーになってもらい、もっと大きなマーケットに広げた方が、格段に効率的ではあります。

広げる先は、一般消費者、業務用などさまざま。例えばシェフがアドバイザリー契約を結んでいるような中小のレストランなどレシピ開発をお手伝いしてるようなところにつなげてもらうような形や、有名シェフが開発から参加した商品というお墨付きによって小売店のバイヤーへの信頼度を上げ成約率をアップさせることが可能になります。

商談会に参加する際には、そういった視点でシェフとの商談に臨んでもらいたいですね。

今回、僕が行った商談会でも、「あなたのレストランで使っていただけますでしょうか?」という質問をされるメーカーさんがおられました。するとシェフが少し困った表情をしながら、「僕と組んだらもっと売れるようになるよ」「この商品をもっとよくする方法を知っているので後で連絡くださいね」と何度もおっしゃっていましたが、まさにこれは僕がこれまで話したことを物語っている訳です。

おそらく彼らは頭の中で、「これならばこの知ってるレストランに紹介できるな」「ここの味を少し変えたら、アメリカ人が好むようになる」というようなアイデアが湧いていて、「是非直接契約させていただき、御社のニューヨークでのアドバイザーになりたい」と考えているのでしょう。しかし、これらの事情を知らないままアプローチしてしまうと、両者の考えが合わなく、結果的に無駄な時間となってしまいます。

特に我々が使うような日本の商材は、アメリカ人の一般消費者にはまだまだ馴染みのないものが多いわけです。

例えば「味噌」。もちろん今や誰でも知っている食材ですが、多くの方々は「お味噌汁に使うもの」という程度の知識しかなく、マリネや調理して使うことに特化している味噌があることなどほとんど知られていないというのが現状です。

そんな時に、契約を結んだシェフが自身の YouTubeチャンネルやインスタグラムなどのSNSで「こんな風に食べるんだよ」「こう料理すると美味しいんだよ」と、ちょっと紹介するだけで、彼のファンの人たちが「すごいなーっ」「味噌ってこうやって使うんだ」と話題になったり、

さらには「この〇〇味噌がいいんだよ」と固有名詞を言ってくれるだけで、売れ行きが急上昇することも当然ある訳です。

これはインスタグラマーを雇って宣伝を依頼するのと似ておりますが、食のプロではないインフルエンサーより、シェフの方が前述の通り広報以外にも多くの重要な役割を担って頂けますし、一般消費者にとっても何倍も説得力がある投稿となることは明白です。

ここまでシェフを例に書いてきましたが、小売店のバイヤーやバーテンダーでも全く同様です。

「消費者に一番近いところで日々経験を積んでいる方々の知見を拝借する」という感覚でいいんじゃないでしょうか。

やはり、アメリカではアメリカの売り方があるのですが、日本で暮らす日本人には、それは分からないのが普通です。日本での売り方のまま(パッケージングや味など)こちらで売れるケースは、さほどありません。

ですので、その際に「どんな変化をつけるか」「マーケティングの手法」などの戦略を立ててるポジションの人材は必要なはずです。

相談会に参加することは最初の一歩で、その後いかに良い関係を構築できるかが、ビジネスを成功させる鍵となってきます。「この人ならうちの商品をアメリカ市場にぴたりと合わせてくれる」と感じたならば、是非次のステップへと前進してみてください。

商談会で出会ったバイヤーとの契約方法は?

気になる契約の仕方ですが、期間や業務内容など一般的なルール、また各業務の相場価格などはなく、相手次第です。

ですので、まずは社内で話し合い「ひとまずこの3カ月だけレーベルの開発のために雇ってみよう」「1年間にわたって毎月2、3個の新しいレシピを作ってもらおう」など自社が現地で足りていないポイントを補うプロジェクトの提案をすることをお勧めします。そうすると、相手から「じゃあ、$○○でお願いします」と、そこで交渉が始まります。

日本に居ながら、世界中のどんなシェフとでも組もうを思えば組めるなど、さまざまな可能を秘めたオンラインの商談会。このような基礎知識を理解した上で、どんどん使ってもらえればと思います。

最後余談になりますが、

NYで活躍しているシェフだと、世界中のさまざまな食材を常に口にしているから比較の対象が世界規模。発想を聞けるだけでも可能性が広がってきます。

このような一次情報を持っている方々との会話ほど面白いことはありません。僕自身、自社が手がける様々な種類のプロジェクトの合間合間に、作家、工芸士、小売店バイヤー、ダンサー、ミュージシャン、研究者、映画監督、企業経営者、医者、などなど多様なプロフェッショナルと日々雑談をしますが、もう全て一字一句一分一秒が面白くて面白くて。常にNYのような混沌とした街の前線で戦い続けている方々の情報って本当に新鮮なんですよ。

僕が時に「そこまで社長がしなくても、、、」と言われるような営業まで自らしたりするのは、この目で直接見て自ら経験することが何よりも自分のクライアントにとって重要な情報となるからで、決して無駄な時間などではないのです。