海外のバイヤーとのオンライン商談会で抑えるべき5つのポイント

オンライン商談会のノウハウ

新型コロナ感染拡大で広がっているオンライン商談会のノウハウについて紹介します。米国では3月のロックダウン以降一気に増え、弊社でも日本の企業と米国のバイヤーとを繋ぐ仕事が増えています。
本記事では弊社の実体験を踏まえつつ、海外のバイヤーとの取引を中心にオンライン商談会の基礎から応用までを解説。コロナ終息後も主流になると言われているので、この機会に学んでいただければ幸いです。

実際に開催したオンライン商談会の様子は下記の記事でご覧いただけます
米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催しました・前編
米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催しました・中編
米国バイヤーへ日本産品を売り込む「オンライン商談会」を主催しました・後編

Zoomが主流 スマホよりパソコンがお薦め

まずはビデオ会議システム「Zoom」を実際に使って慣れましょう。さまざまなビデオのツールがありますが、現時点では世界的にZoomを使用するケースが圧倒的に多数です。接続機器はスマートフォンを選ぶ人が多いようですが、可能ならば PC など、画面が大きいものを選ぶとよいでしょう。スマートフォンの場合、画面に近寄りがちになる傾向があり、相手の画面いっぱいに顔が表示されて嫌がられるケースがあります。

カメラの精度も重要です。ノートパソコンなどに付いているカメラでも構いませんが、性能の良いスマートフォンのカメラを外付けにしたり、一眼カメラを接続するなどし、画質の向上を検討すると良いかもしれません。メリットは商品が美しく見えるだけではなく、自由に画像の角度を設定できること。細かい部分などを見せたい時に便利です。

②資料の画面表示や服装など 事前準備を念入りに

商談会では、 PowerPoint や Keynote などで作った資料を画面上で流しながら説明するのが一般的です。Zoomを使ってスムーズに表示できるように練習しておきましょう。動画を流す時は、音量が小さくて聞こえにくいケースが多いため事前に確認しておきましょう。

服装は基本的に自由ですが法被(はっぴ)など、外国の方の記憶に残るアイテムの着用がお勧めです。弊社の事例では、豆腐メーカーのオンライン商談会の際に、一週間後にバイヤーから「赤い衣装を着ていたメーカーの豆腐について詳しく知りたい」と連絡があり、交渉が進んだケースがありました。法被などの衣装に限らず、特徴的なZoomの背景を使うのも良いでしょう。

③挨拶はポイントを押さえて 冒頭は英語で 

挨拶やイントロダクションに関しては、出来る限り英語がおすすめです。はじめから通訳を入れることも可能ですが、一言で良いので英語を使うと印象が良くなります。

自己紹介での注意ポイントは、特定の地域の固有名称を長々と話さないこと。あくまで一例ですが「弊社は岐阜県の長良川大日ヶ岳の麓に位置し…」といった下りです。この点が自社の商品を作り出す上で重要な特徴であることは分かりますが、よほどの日本通バイヤーではない限り「何を話しているのかよく分からない…」となり、時間の無駄になることが多いです。その代わりに、従業員数や売上高など、規模が分かる情報や「日本国内ではトップのシェアです」「海外ではすでにどの国で販売し、売れています」といった、事前資料に記入していても、あえて強調したい内容を挨拶で入れると良いでしょう。また、意外かもしれませんが、「創業何年の老舗です」という情報もプラスになります。

もしかしたら「米国では創業年数などの感覚は薄い」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、弊社の経験では信頼に繋がる傾向が見られました。もちろん、これらの内容で取引が動くわけではありませんが、初めの挨拶に入れることで、続いて行う商品説明の際に商品への具体的なイメージが生まれることは間違いないでしょう。

④商品説明は強みを重点的に解説 動画も使ってPRしよう

商談会のメインとなる商品説明では、すでに送付済みの詳細や資料を読み直すのではなく、自社が強みだと思う点を重点的に話してください。また、最近の傾向として、商品の製造工程など、工場の様子を3分程度の動画で見せるケースが増えています。商談会の途中でスマートフォンなどをライブにして見せることも可能ですが、回線が遅れたり、画像がブレたりと、うまくいかないケースが多々あるので、事前に簡単なもので良いので撮影し、作っておくと良いでしょう。

例えば自社商品の売りが「手作り」「オーガニック」でしたら、その点がわかる製造工程を動画で流し説得材料とすると良いでしょう。予算をかけた映像である必要は全くありません。製造工程などは、企業秘密であるという場合は、バイヤーに限定公開し、オンライン等では発信しないスタイルを選ばれても全く構いません。

また以前の記事で説明した「競合商品との比較表」は、現在扱っている類似商品を、御社の商品に置き換える場合のイメージが付き、強力なアピールになります。弊社でも営業活動で一番力を入れる部分はこの点です。他社とどう違うのかはきちんと説明できるようにしておきましょう。

⑤プレゼンテーションの構成はじっくり練ろう

プレゼンの際によく見られるケースが、複数の商品の資料を一気に読み、全てをまとめて試食してもらうパターンですが、これは避けましょう。
おすすめの方法は、一点ごとに説明後に試食してもらい、意見を聞いてディスカッションを行う。一通り済んだら、次の商品へ進む形です。

試食の際には必ずバリエーションについての話もしましょう。日本での食ベ方に加え、海外の人が馴染めそうな食べ方の提案もできるとイメージが湧きやすくなります。自分たちのアイデアを披露し、その場でバイヤーに意見を求めたり、質問をすると商品開発のヒントを得ることができます。例えば「ピザのトッピングに使えるか」「冷やして飲むのと温めて飲むことの違いは何なのか」「ペアリングにはどういう系統のものが合うのか」などです。商談会の目的は自社商品を売り込むことですが、折角の機会なので、是非色々な質問をし、御社の今後のためにご活用いただければと思います。

オンライン商談会の進め方の一例

⑥魅力的は商品の見せ方

商談会当日は、基本的に事前にバイヤーの手元に商品サンプルを送った状態で行います。しかし、すべてのパッケージのバリエーションなどを事前に送ることは難しいため、カメラを通して見せる必要が出てきます。色味やサイズは正確に伝える必要があるため一度社内で二つズームのアカウントを作り事前に相手側にどのように見えるかを確認しましょう。

ただ、色味はカメラの質や個人の設定、時には回線の速度によって変わってしまうものです。そのため、お勧めは万国共通で色彩がわかるものを横に並べることです。例えばコーラの缶を横に置くと、赤の色合いが理解しやすいでしょう。また、サイズに関しては、米国ではインチが必須でセンチメートルはいらないと聞いたことがあるかもしれませんが、日本の商材を扱うようなインターナショナルの店では、センチの表記がある商品も多いため両方を抑えておきましょう。またライバル社の商品が手元にあるならば違いをカメラを通して見せるのも良いと思います。日本であまり行いませんが、欧米では他社のライバル商品との比較を通して自社商品を売り込むことが多いです。商談会の様子は YouTube や Facebookなどを通して不特定多数が見るわけではありませんので、遠慮なく自社の優位性について語っていただければと思います。

ーまとめー

現在は、まだまだオンライン商談会の黎明期です。テクノロジーの進化とともに変化すると思われますが、基本的なポイントは変わらないでしょう。このシステムの普及により遠く離れた海外で販路を拡大するチャンスが、今後さらに増えていくことは間違いありません。

日々増加しているオンライン商談会を活用し、NYCの企業と商談をされたい企業さまは、ぜひご相談頂けますと幸いです。

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【解説】池澤崇

RESOBOX代表取締役社長。2005年にニューヨーク移住、邦銀勤務・大学院進学を経て、11年に起業。現在同市内で日本文化スペースやレストランを運営。日本企業(主に中小企業)の米国進出の支援事業も行う。19年より経済産業省所管中小企業基盤整備機構の国際化支援アドバイザー就任。

池澤崇
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