最高級ブランドに認められた日本の工芸品とは


こちらの記事で、良い素材を使っている商品でも、アメリカ人に受け入れてもらうには明確なメリットが必要だとご説明しました。一方、そのメリットは、詳細説明や客観的数値がなくても伝わる場合もあるのです。今回はその事例をご紹介します。

10万円ごえの最高級靴べらをニューヨークへ

秋田県の橋野浩行さんは美しいフォルムと耐久性の高い木工製品を作る木工工芸作家です。中でも靴べらは宮内庁御用達の逸品で、お値段は日本円で10万円以上。国内では非常に人気が高く大成功している一方、自身が挑戦する姿を若者に見せて勇気を与えたいという思いから、ニューヨーク進出を決められました。

誰に、何をメリットとして伝えるのか?

ここで問題なのが、どのようにメリットを訴求するのかと、ターゲットを誰にするか。日本人に対しては、「日本一堅く耐久性があり、年に0.2mmしか太くならない大変希少価値の高い木を使っている」と言えばその価値は十分伝わるでしょう。しかし、アメリカ人に対してこの価値を伝えるのはそう簡単ではありません。この品質と希少性を、靴べらの価値に結び付ける必要があるからです。とは言えまずは見てもらわなければいけない。弊社RESOBOXの営業担当はターゲットをニューヨークの最高級紳士服店に定め、この靴べらを手に商談を開始しました。

超高級紳士服店社長の意外な反応とは

1着500万円以上するスーツを扱う超高級紳士服店「Kiton」ニューヨーク店でのこと。商談に応じた社長は当初は特に期待はなかったようですが、商品を見た瞬間態度が一変。毎日最高の商品に触れている社長は、靴ベラを見て触っただけでその価値を察したのです。日本円で10万円以上という高価格にも関わらず、すぐに商談はスムーズに進みました。客観的な耐久性のデータや細かい素材の説明は必要がありませんでした。品質がすべてを語ったのです。

「分かる人」と商品をつなぐ

同じことはレストランでも起こりました。靴ベラと同様の木を使った橋野さん作のお猪口を、ミシュランを獲得した高級レストランに持っていくと、オーナーは一目見るやいなや「良い木を使っているな」と唸られたそう。重要なのは、商品の価値を理解できる人にアクセスすること、そしてそこに繋がるネットワークを持っていること。普通のファッションや食器のバイヤーと会うだけでは、この価値は分かってもらえなかったかもしれません。どんなに高価な商品でも、品質が伴ってさえいれば海外進出の道は開けるのです。

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